ちえとくをフォローする

エコフレンドリー

地球環境のために知っておきたい|アボカドブームの裏で起きていること

森のバターと呼ばれ、ビタミンやミネラルなど栄養価が高いアボカド。美容と健康にいいだけでなく、クリーミーでリッチな味わいが人気を呼び、日本だけでなく世界的にここ十数年で消費量が増えた果物です。

スーパーフードと呼ばれ昔に比べ価格も安価となり手に入りやすくなったアボカドですが、需要が高まる一方であまり知られていない事実があります。それは環境や生態系への影響。アボカドは、一体どんな影響を与えているのでしょうか。

森林伐採や干ばつ

私たちが手にするアボカドのほとんどが輸入されてきたもの。亜熱帯果実であるアボカドは特定の生態系でしたか育たず、メキシコ、ドミニカ共和国やペルーといった南米、西インド諸島にケニア、北米カリフォルニアの一部地域が主な産地となっています。年々高まる需要に対し、アボカドの主な産地で起こっているのが深刻な環境破壊です。

メキシコではアボカド果樹園を拡大するため、松林やもみの木の森林が開拓されています。一度切り崩してしまった森林は、再び森林として再生することが非常に難しくなります。

そしてアボカド栽培には大量の水が必要です。南米チリの農業地域ペトルカではアボカド栽培のため大量の水が使われ、地域住民が生活に必要な水を十分に得られなくなってしまっているという事態が発生しています。

降水量が少ないこの地域では、アボカド農園に水を行きわたらせるため地下水を利用しています。しかし、大量の水を確保するために生産者により水道管や井戸が違法に設置され、河川が干上がり生活に必要な水が不足しています。

(チリのアボカド産地を上空から写した写真。潤っている箇所とそうでない箇所がはっきりと現れています)

アボカド1キロを育てるために必要とされる水は2000リットル。オレンジの4倍、トマトの10倍にも及びます。また、アボカド果樹園で1日に必要な水の量は、1ヘクタールにつき10万リットル。これは、1000人が1日に使用する水量に匹敵するそうです。このため、ペトルカの地域住民たちの飲み水や庭の水やりや洗いものに使える浄水はほぼ枯渇してしまった状態にあるそうです。

Water

このような干ばつを受け、住民はトラックで給水を受けることに。しかし、給水された水質は非常に悪く、本来糞便に含まれる大腸菌が高いレベルで発見されたこともあり、煮沸しなくては使えるものではないレベルの水だと言われています。飲み水に至っては、多くの住民が購入を余儀なくされているそうです。

ゾウの生息地を奪う

年々少なくなる個体数に絶滅が危惧されつつあるアフリカゾウ。これまでは密猟や干ばつが原因とされてきましたが、アボカド需要の高まりがアフリカのゾウたちの生存を脅かしていると言われるようになりました。

アボカドの産地として知られるケニア。ゾウやその他の野生動物が生息するアンボセリ国立公園付近では近年アボカド農園が増え、ゾウたちの生息地を奪っているとされています。

国際自然保護連合(IUCN)は、密猟と農業への土地転換による生息地の破壊が、アフリカ全土でゾウの個体数を激減させていると警告。アフリカゾウの中でも、アンボセリ国立公園付近に生息するサバンナゾウがこの50年間に少なくとも60%減少し、絶滅の恐れがあるとしています。

アフリカゾウの生息地が奪われるようになってしまった背景には、ケニアの国家環境管理局が農業ビジネスをする企業に対し、現地住民から土地を購入しアボカド農園にすることを許可したということもあります。しかし根本にあるのは、高まる需要と安価なアボカドの安定供給を求めた結果なのです。

(アンボセリ国立公園付近で、アフリカゾウの移動ルート内に開墾されたアボカド農園用の土地)

アボカド農園の出現により、ケニアでは推定2000頭ものゾウが、水や牧草地を求めて移動するルートが妨げられており、多くのゾウが農場の電気柵に激突し、命を落とすという痛ましい事故も起きています。このような商業農場の出現は、ケニアの野生動物にとって密猟より存在を脅かす危険なものとなっているそうです。

日本では流通するアボカドの90%以上が輸入と言われ、そのほとんどがメキシコからの輸入品です。そしてなんとメキシコから日本へのアボカド輸出量はアメリカ、カナダに次ぐ3番目の量です。

しかし近年では和歌山県や愛媛県と言った温暖な地域でアボカドが栽培され、国産アボカドが少しずつ流通するようになってきています。海外産といっても環境負荷の少ない方法で作られたものも出回っています。産地や生産地に注意して買い物することが大切なのかもしれません。

私たちにできることは、消費者としてこのような背景を知ること、そしてそれを踏まえた上で、何を選択するかということではないでしょうか。小さなことではありますが、一人一人が日々の暮らしの中で環境に対するポジティブな選択をしていけるようになるといいですね。

プレビュー画像:©︎Pinterest/Buza Ancsa 

地球環境のために知っておきたい|アボカドブームの裏で起きていること