ヘルスケア
BMI値は重要?体重基準のダイエットは時に不健康な理由
糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病などと言った健康上の問題を引き起こすと言われている肥満。しかし、肥満が本当に体に悪影響を及ぼすのか疑問の声もあがっています。身長に対する体重が適正かどうか図る一つの目安として知られているBMI値ですが、多くの医師が近年になり否定的な見方をするようになっています。体重が重すぎるからといって必ずしも減量が正しい方法ではないのだそう。体重にこだわったダイエットは体にどんな影響をもたらすのでしょうか。
BMI値が全てじゃない:減量が正しいとは言えない理由
年齢とともに運動量が減り、増える傾向にある体重。元に戻すため多くの人がダイエットに励みますが、ダイエットが全ての人にとって正解とは限らないようです。
1. 標準体重より太めの方が長生き
アメリカ・ オハイオ州立大学の研究によると、標準体重から太めに変わった人のほうが長生きすることが明らかになっています。特に、高齢になるとBMI値が標準より高いと高血圧や心臓発作、脳卒中、うつ病や筋力低下、骨粗鬆症といったリスクが下がると言われています。ドイツ肥満学会のマルティン・デ・ツヴァーン氏によると少し肥満気味の人の方が重篤な病気をした場合に、体に蓄えた脂肪が助けになると話しています。
ただ、肥満なら健康というわけではなくBMI値が30を超えた場合は逆に健康へのリスクは高まります。
2. BMI値だけを目安にしない
BMI(ボディ・マス指数/体格指数)は身長からみた体重の程度を示す体格指数です。しかし、一言に体重と言っても年齢や体の筋肉、脂肪の割合は一人一人違い、BMI値にはそう言った内容が反映されていません。そのため、BMIが高いからといって必ずしも不健康なわけではありません。見かけの理想の体重はそれほど重要ではないのです。また、これを受けドイツ・ライプツィヒ大学の肥満外来の医師たちは、健康上の支障がなければ、肥満であることはさして問題ないと話しています。
3. 遺伝子の影響
肥満は実にその60%が遺伝すると言われています。太りやすい遺伝子は「肥満遺伝子」とも呼ばれ、実際には肥満させる遺伝子ではありません。この肥満遺伝子を持つ人は、脂肪を燃焼させて消費する働きが弱いため、エネルギーが消費されずに余りがちになり、太りやすく痩せにくいと言われています。そのため、肥満遺伝子を持つ人にとって体重を減らすのは簡単ではないのです。
4. 肥満はストレスから身を守る
肥満気味にあるという人は、他の人よりもストレス耐性があると言われています。現代人の多くはストレスを抱え、またストレスはその他のさまざまな体の不調を引き起こす原因ともなっています。ストレス社会に生きる中、無理して痩せようとダイエットをすると体には相当なストレスになってしまいます。また、ダイエットにより脳は栄養不足となり、疲労感や集中力の低下を引き起こし、さらにストレスレベルがアップという悪循環になる可能性もあります。
5. ダイエットをすればするほど太りやすくなる
運動をせず、ただ体重を減らそうとすると脂肪細胞よりも筋肉がどんどん減ってしまいます。これがただ体重にこだわっただけのダイエットの恐ろしいところ。というのも、筋肉があることでカロリー消費をするので、筋肉が減って体重が落ちたからと言って、再びいつも通りに食事を戻すと体のカロリー消費量はダイエット前よりも減少し、太りやすくなってしまいます。
このように、ダイエットは時に負のサイクルを呼び起こすこともあるのです。
6. 無理なダイエットを続けると…
上記に説明したように、無理なダイエットをすると体の筋肉量が減り見かけの体重を減らすことはできます。しかし、このような無理なダイエットを続けていると太りやすくなるだけでなく、体の代謝機能に大きな影響を与え将来的に糖尿病や脂肪肝を引き起こす原因となってしまいます。
7. 栄養不足
ダイエットに我慢はつきもの…とは言いますが我慢のしすぎで結果として体に必要な栄養素が不足してしまうことにもなってしまいます。その結果、爪が割れやすくなったり抜け毛に悩まされたり、さらには免疫力の低下やうつ病、性欲減退などさまざまな影響が現れます。
ダイエットをする時に知っておきたいのは、栄養不足は減量を邪魔することもあるということ。例えば、亜鉛やビタミンB6は脂肪燃焼における重要な栄養素。また、体を守る「微量ミネラル」と言われる栄養素は、食欲調整にも大きな役割を果たしてます。
このように、ダイエットはただ体重を減らせばいいというわけではありません。数字重視で減らしたところ、逆に健康被害を引き起こしてしまうこともあるのです。
数字の体重よりも実際の体の健康が大切
太り過ぎは確かに健康上の問題を引き起こします。しかし、標準体重よりも少し重いくらいの軽度の肥満であれば、問題はありません。大切なのは数字よりも、体も心も活き活きと健康かどうかです。もし少し肥満気味なのが気になる…という場合体重を減らすよりも運動をした方が効果的です。
最近は宅トレブームもあり、みなさんダイエットをする時はしっかり運動をし栄養バランスにも気をつけている方が多いと思います。体重を目標に掲げダイエットに励むのはとてもいいことですが、数字はあくまで数字と考え、体の健康を最優先してくださいね。
以前紹介した、アスリートの摂食障害については以下の記事をご覧ください。
出典: geo, praxisvita, tagesspiegel
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