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Lifehacks

いじめ問題と戦うドイツのアクション俳優:親が子どもに絶対に言ってはいけない言葉とは

カーステン・シュタールはドイツのTVアクション俳優です。身長190cm、体重112 kgという筋肉隆々の体格と全身にいれたタトゥーが彼のトレードマーク。そんなカーステンには俳優とは別の顔があります。彼はいじめ撲滅活動家として毎週学校を訪問し、いじめについてのアドバイスをしているのです。彼がこの活動をはじめた背景には彼自身の苦しく悲しい経験がありました。

10歳のとき、カーステンは工事用の穴に突き落とされました。肋骨が折れ、唇からは出血し、ほとんど息ができない状態でした。他の子どもたちは穴の端に立って笑っていました。一人がズボンを開けて穴の中におしっこをすると、他の子も同じことをしました。

数時間後、カーステンはまだ穴の中で倒れたままでした。暗くて、寒い、でも家に帰りたくない、死にたい…。でも、彼は母親に「今日はどうだった」と聞かれ、こう答えました。「別にいつも通りだよ」 …その後、カーステンは学校には行かず、地下室に隠れるようになりました。両親はそれに気づきませんでした。

カーステン・シュタール「いじめに対して親ができること」

カーステンはいじめをなくすには「なぜいじめは発見されないことが多いのか?」という問題を解決することが大切だと考えています。

Rough Day at the Ballpark

カーステンは、その理由をいくつか挙げています。多くの親は日々の生活に追われ、自分の心配事を抱え、時間がない。そのため、子どもが急に元気がなくなった、おねしょをした、学校の成績が下がった…などのいじめのサインがあっても気づくことができないのです。

しかし、いじめが発見されない最大の理由は、「子どもたちが自分の嫌な経験を話さない」ことだとカーステンは言います。子どもたちは恥じているのです。実際、カーステン自身も子どもの頃、「被害者」であることを恥じていました。

©Gettyimages

多くの親は、意図せずに、子どもに「強いことはいいこと」という間違ったイメージを与えています。さらに、子ども同士のいじめを、単なる「いじり」や「悪ふざけ」だとスルーしがちです。

しかし、カーステン・シュタールは警告します。「男の子でしょう」「もっと強くなりなさい」「我慢していれば収まる」このような言葉を親は絶対に言ってはいけないのだと。なぜなら、子どもたちが幼い頃から「歯を食いしばって不正を飲み込め」と教えられていたとしたら、子どもたちは自分の悲しみや苦しみを大人に打ち明ける機会を奪われてしまうからです。

学校などでいじめられている子どもは、「自分がどうしたいか」よりも、「親がどう思うか」を気にしています。親が子どもに心を開いていなければ、子どもは親にいじめられていることを打ち明けることはできません。その結果、子どもたちはいじめられて死ぬか、暴力的な犯罪者やいじめっ子になってしまうのです。ここでもカーステンは自らの経験を語っています。カーステンは、自分自身が凶悪犯罪者としての経歴を持っているのです。

カーステン・シュタールは自らの経験をもとに、親には別の道を選んでほしいと願っています。「目をそらさないで!」と彼は言います。子どもの様子が何かおかしいと思ったら、すぐに親が心を開いて、子どもに聞いてみるのです。子どもが辛い気持ちを話してくれたら、気持ちを受け止めて、何があったのか、子どもがどうしたいのかを否定せずに聞いてあげる、それが子どもの助けになり、信頼を築くことにもなります。

一方で、親が自分の手で問題を解決しようとするのは絶対にやめるべきです。加害者を責めても解決にはなりません。結局のところ、いじめっ子は自分自身が暴力や屈辱の被害者であることが多いのです。だからこそ、いじめのスパイラルを断ち切り、教育的な対応をとることが重要なのです。

「子どもが学校でいじめられたら、できるだけ早く担任の先生に相談してください。先生が真剣に受け止めてくれなければ、校長に相談してください。そこでも無視されたら教育委員会に行くのです。毅然として事実を述べ、対策を要求しましょう」

Bullying

カーステンは多くの学校を訪れ、子どもたちや若者たちにいじめの経験について話しています。

カーステンは被害者から加害者に、そして戦士へと転身しました。教育と誠実さで、いじめのスパイラルを断ち切ろうとする戦士です。自身も親となったカーステンは、自分のメッセージが子どもたちだけでなく、世界中の親たちにも届いてほしいと心から願っています。

 

プレビュー画像: ©flickr/Matt