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Lifehacks

段ボール箱に紙を投げ入れるゲームが意味するもの

アメリカのとある中学校にて。ある日、先生が空の段ボール箱を抱えて教室に入ってきました。そして生徒たちにこう言いました。

「今日は特別授業をしましょう」

Classroom

そう言うと先生は、空の段ボール箱を黒板の前に置きました。そして、生徒たちに1枚ずつ紙を配ります。

「それでは今からみなさんに…ゲームをプレーしてもらいます!」

子供たちはゲームをできると知って大喜び。

ゲームのルールは簡単。紙に自分の名前を書き、それを丸めて、自分の席から立たずに黒板の前の段ボールに投げ入れると言うものです。

最初はゲームを楽しんでいた子供たち。しかし、何ラウンドか繰り返していると、やがて子供たちはゲームをプレーするのをやめてしまいました。

「…こんなゲームは面白くない」

生徒のうちの一人がそう言いました。先生は尋ねます。

「それはどうして?」

「だってこんなゲーム、前の方に座っている人たちが有利に決まっているじゃないですか。後ろに座っている人たちにとっては、難しすぎると思います」

実際に、その通りでした。段ボールの中にうまく紙を投げ入れることができていたのは、前の方に座っている生徒たちばかりだったのです。後ろの方に座っている生徒たちは、面白くなくてゲームを投げ出してしまう者もいました。

先生は生徒の言葉を聞くと、微笑んで、頷きました。

「その通りね。ではみなさんは、どうして私が今日このゲームをやったか分かりますか?」

沈黙。先生は息を吸い込むと、ゆっくりと続けました。

「なぜかと言うと、これが現実世界で起きていることだからです」

えっ?という顔で、生徒たちは先生の顔を凝視しました。

「現実世界で何が起きているのか、想像してみてください。前方に座っている人は、経済的に豊かだったり、健全な家庭で育っていたり、ヘテロセクシャル(異性愛者)だったり、シスジェンダー(性別と自分の認識する性が一致する状態)だったり、優遇される人種や性別だったり…世間から差別されることの少ない人々だと仮定してみて。しかしその一方で、後ろの座席に行くほどそうではない境遇の人と言うことになる」

先生はこう付け加えました。

「…そして、前に座っている人たちは、決して、後ろの席を見ることはないのです」

教室は静まり返りました。

classroom

先生はゆっくりとこう言いました。

「貧困や望む人生を生きられないことが自己責任と言われてしまうこともあります。けれども、自分が他の人より前の席に座っていただけだったのではないかと考えることを忘れないで。そして、常に自分より後ろの席に座る人のことを思いやることを忘れないでください」

いかがでしたか?

特権を持つ人、ゲタを履かされている人は、自分でそれを自覚することがとても難しいのです。

アメリカなどでは、そのような問題について考えることは「社会的公正教育(Social Justice Education)」として学校で取り入れられており、このゲームは、子供たちがそう言った見えない特権を直感的に理解できるように、実際に行われているそうです。

社会から格差をなくすためには、特権を持っている人たちがそれを強く自覚する以外の道はないのです。

 

 
 

プレビュー画像:  / © Pinterest/ kareha5-open2ch.blog.jp