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DIY

荒地に60年以上隠されていた戦時中の地下シェルターが快適な邸宅に大変身

英国在住のエリザベス・ストラットンの家は、奇妙な場所にあります。周りを見渡せば、荒れ果てた野原、広い地平線。湿った空気から潮の香りが伝わってきます。広い丘の一角に小さく突き出たいくつかのガラス製ドーム、そこが彼女の家です。

彼女の家は、もともとは第二次世界大戦で使われていた「バンカー」と呼ばれる戦闘機の監視に使用された地下シェルターでした。このバンカーは1942年に建設されましたが、戦後60年間放置され、その後、農家がジャガイモを栽培するために使っていました。

2007年、偶然このシェルターを見つけたとき、エリザベスは若くして起業家を志していました。壮大な場所に隠された不思議な建物に心を惹かれた彼女は、別荘として使えるかもしれないと気まぐれでこの放置されたシェルターを購入。しかし彼女はこの後、自分がいかに世間知らずだったかを思い知ることになります。

エリザベスが予想していなかったことは2つ。「コンクリート製バンカーの構造」と「金融危機」です。

「バンカーの改修は難航を極めました」とエリザベス。それは決して大げさな表現はありません。何しろ空襲に耐えうるように設計されたバンカーなのです。依頼した建設会社の中には、このような構造の建築物を改修したことのある会社は皆無でした。「窓も非常階段もありません。コンクリートの屋根を突き破って非常用スプリンクラーを設置するだけで1カ月以上かかりました。また、厚さ1メートルの土の下ですから、湿気を防ぐために建物全体を断熱する必要がありました」バンカーの改修費用は予想をはるかに超えて膨らみ、エリザベスの手元資金は消えていくばかりでした。

©YouTube/HGTV

追い討ちをかけるように起きたのが金融市場の大暴落です。「タイミングは最悪でした」彼女は手持ちの収益性のある不動産をすべて売却することを余儀なくされました。残ったのは第二次世界大戦中のバンカーだけ。

しかし、エリザベスは約14万ポンド(約2000万円)で購入したバンカーに5年の歳月と10万ポンド(約1500万円)の資金を投じ、理想の家を作り上げました。かつての監視センターは、3つのベッドルーム、2つのバスルーム、ゲスト用トイレ、広々としたキッチン兼リビングルームを備えたスタイリッシュなバンガローに生まれ変わったのです。

一番の目玉は、その眺めです。屋根に立つと周囲の広々とした野原や崖が一望できます。エリザベスはこのバンカーを「パラダイス」あるいは「魔法の要塞」と呼んでいます。「バンカーを引き継いだときには、自分が何をしているのか分かりませんでしたが、今では世界で最高の場所に住んでいると実感しています」

この家は世界の果てのような人里離れた場所にありますが、エリザベスは孤独ではありません。家族や友人たちが非日常的な場所を楽しもうと、次々に訪ねてくるのです。また、エリザベスのプロジェクトを知った退役軍人や学者たちが来訪し、バンカーの歴史を教えてくれることも少なくないと言います。たとえ訪問客がいないときでも、エリザベスは3匹の犬(バセットハウンド2匹とジャーマンシェパード1匹)を飼っているので寂しくはありません。

ほんの気まぐれに下した決断が、人生を大きく変えるなんて運命は不思議です。エリザベスのバンカーハウスの詳細は、この動画(英語)でご覧いただけます。荒地の下にこんな邸宅が隠されているなんて、驚きですね。

他にも、英国で暗い地下牢をモダンな邸宅に改造した若者もいます。こちらの記事も併せてご覧ください。

プレビュー画像: ©YouTube/HGTV