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ガーデニング

ドイツの農民に古くから伝わる四季折々の天気の言い伝え

古来より農業に従事する人々は季節の移り変わりの目安となる日を決めて、次の季節や1年の天候を占い、その知識を口伝してきました。こうした言い伝えは、天候や動植物の変化をこまやかに観察してきた長年の経験に基づくもので、今も農家やガーデニング愛好家たちを助けています。

この記事では、ドイツの農民に伝えられてきた四季折々の天気の言い伝えをご紹介しましょう。ドイツのガーデナーたちは今もこうした言い伝えを大切にしているそうです。

日本とは少し違う季節感や言い回しも興味深いですよ。

Grandma

日本では「八十八夜の別れ霜」と言って、立春88日目の5月初旬になれば霜が降りなくなると言われています。せっかく種を蒔いても霜にやられてしまっては元も子もありません。遅霜は農家にとっては死活問題なのです。

ドイツでも5月に寒の戻りがあることが多いため、遅霜の被害を避けるために次の言葉が伝えられています。

「ゾフィーを過ぎれば霜の心配はもういらない」(Vor Nachtfrost du erst sicher bist, sobald Sophie vorüber ist.)

ゾフィーというのは聖人の1人。キリスト教圏では日付ごとに聖人の名前が割り当てられているのです。寒の戻りが多いとされる5月11日から15日には氷の聖人5人にちなんだ名前がつけられており、その最後の15日がゾフィーの日。この言い伝えは、ゾフィーの日(5月15日)を過ぎると霜の心配をせずに種まきができる、ということを教えているのです。

もうひとつ、ドイツの春の暦にちなんだお天気の言い伝えです。

「聖金曜日に雨が降ったなら、その年は乾燥しているが実り多い年になる」(Wenn an Karfreitag Regen war, folgt ein trockenes, aber fruchtbares Jahr.)

聖金曜日はイースター(復活祭)の2日前の金曜日。復活祭は、春分の日の後に来る最初の満月の次の日曜日なので、毎年日付が変わりますが、大体4月末から5月始めに当たります。

Farmers Life

4月は日本でも三寒四温と不安定な季節ですが、ドイツでも4月は天気の安定しない時期。でも、もし4月が穏やかだったら、5月が怖いことになるぞ!という言い伝えもあります。

「4月が美しく穏やかであれば、5月はいっそう荒れ狂う」(Ist der April schön und rein, wird der Mai umso wilder sein.)

夏の暦にまつわる言い伝えで最も有名なのは、6月27日の「7人の眠り男(Siebenschläfer)の日」。

「7人の眠り男の日に雨が降ると向こう7週間は雨が降る」(Wie sich das Wetter am Siebenschläfer verhält, ist es sieben Wochen lang bestellt.)

日本でも6月から7月は梅雨ですが、ドイツでも雨の多い月になることが多いのです。

Grandpa working

そして、本格的な夏到来。ドイツでは、7月23日から8月23日は「犬の日々」(Hundstage)と呼ばれています。ちなみに「犬の日」というのは、ドイツ語では「暑い日」「猛暑日」の意味で使われます。

なんで犬?と思われるでしょう。これは、この時期におおいぬ座のシリウスが日の出と共に現れることに由来します。この犬の日々の天候で、次の冬の天候が占われてきました。たとえば、次のような言い伝えが有名です。

「犬の日々が暑ければ、冬は長く白いまま」(Sind die Hundstage heiß, wird der Winter lange weiß.)

8月には次のような言い伝えもあります。

「8月に雷雨が多ければ、冬は寒くて厳しいものになる」(Bringt der August viel Gewitter, wird der Winter kalt und bitter.)

Thunderstorm

9月になると農家やガーデナーにとって心配なのが寒波の到来。寒波が早く訪れるのであれば、早めに冬支度をしなければならないからです。たとえば、聖ミカエル祭(9月29日)の天気は寒波を予想すると言い伝えられています。

「ミカエルが晴れていれば、2週間後には冬になる」(Gibt Michael Sonnenschein, wird es in zwei Wochen Winter sein.)

harvesting potatoes

黄金の秋と呼ばれる10月。紅葉が木々を染める美しい季節なので、この時期の雨は残念に思われますが、農家にとっては恵みの雨になるようです。こんな言い伝えがあります。

「10月に雨が多いと、庭にとっては恵みの雨となる」(Bringt der Oktober viel Regen, ist’s für den Garten ein Segen.)

そして晩秋の11月。この時期に早くも湖が凍ってしまった時は、1月に雨が多いと言われます。

「11月に水が凍れば、1月の湿度が高くなる」(Gefriert im November schon das Wasser, wird’s im Januar noch nasser.)

never ending rain

冬の始まりの12月の言い伝えは来年を見据えたものが多くなります。例えば、穏やかで雨の多い12月は、冬の終わりから春にかけての寒波の到来を意味し、来る収穫シーズンに悪影響があると言われています。

「12月が穏やかで雨が多いと、収穫に恵まれない」(Ein milder Dezember mit viel Regen ist für die Ernte wahrlich kein Segen.)

一方、1月が寒いと、夏は暑く、秋の豊作が約束されると言われています。

「1月が明るく白ければ、夏暑くなる」(Ist der Januar hell und weiß, wird der Sommer sicher heiß.)

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2月は、春を待ちわびる季節。同時に、種まきやガーデニングを早く始めすぎないようにという警告が多くあります。たとえば次のようなもの。

裸の森に雷が鳴れば、必ずまた寒くなる」(Donnert’s überm kahlem Wald, wird’s gewiss noch einmal kalt.

Bare low shrubs in the Mixed Oak / Heath Forest

ドイツの農民に伝わる言い伝え、いかがでしたか?日付に聖人の名前がつけられていたり、星座に由来する言葉であったり、日本とは季節の表現に違いがあり、興味深いですね。

気候変動とそれに伴う天候の変化により、こうした天気にまつわる言い伝えや季節感にはずれが生じているようです。それでも多くの言い伝えには今もなお多くの人々の役に立っています。

日本にも四季折々の暦や雑節がありますね。皆さんが大切にしている季節の行事や言い伝えはありますか?

出典:DIY , garden tips
プレビュー画像:© Flickr/Anne Bollwahn