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Lifehacks

持続可能性の救世主?!動物の糞の資源としての活用

日本、そして世界中で「金の糞をする動物」や「糞を金に変える魔法」についての民話や伝説が語り伝えられているように、「糞を金にする」ことは古くからの人類の夢でした。

そして持続可能性が求められる現代では、動物の糞の有効活用に新たな価値が見出されています。古代からの知恵や最先端のテクノロジーを使い、牛糞をはじめとする動物の糞や排泄物が、肥料、暖房、燃料、住宅建設などに広く活用されているのです。

どんな風に使われているのでしょう?現代の「糞を金にする」方法、ご紹介します。

1. 住民の排泄物で走るバス

英国西部のブリストル空港と古都バースをつなぐ路線では、住民の排泄物(人糞)と廃棄食糧をメタン発酵させたバイオガスでバスを走らせています。バスにはトイレに座った人々のイラストが描かれています。満タンで約300キロ走行でき、排気ガスは出ますが、ガソリン車やディーゼル車に比べて排出量は少なく、大気汚染削減にもつながります。バイオガスの主成分であるメタンガスと二酸化炭素は無臭なので匂いの心配もなく、まさに理想的な燃料!ただし、現時点ではまだ採算が合わず、他の都市への普及には至っていません。

@wikimedia/Geof Sheppard/ CC BY-SA 4.0

2. 犬の糞が街を照らす

世界的に、公共の場所や公園での犬の糞害が大きな問題になっています。その問題を解決すべく、英国のウスターシャー州に犬の糞を燃料とする街灯が設置されました。

このアイデアを思いついたのは、発明家のブライアン・ハーパー。彼は美しい景観を誇る地元が、ペットの置き土産に汚されていることをずっと苦々しく思っていました。そこで糞を分解して燃料とする街灯を自宅前に設置し、通行人に糞回収の袋を無料で配る試みをはじめました。回収ボックスに糞を入れてもらうと、フン10袋で2時間程度、灯りがつく仕組み。評判は上々なようです。

同様のプロジェクトは米国マサチューセッツ州でもスタートしています。犬の排泄物でドッグパークに灯りをともそうという「パーク・スパーク・プロジェクト」では、飼い主が生物分解性のある袋で犬のフンを拾い、公園のタンクに投入すれば、公園内の照明のエネルギーとなる仕組みです。

Precision bombing

3. 牛糞の家、家具、食器

牛糞は優秀な資源です。安価であるだけでなく、乾燥後はセメントと同じくらい硬くなり、風通しもよいため、アフリカや南太平洋諸国では、古くから家を建てる建材として使われてきました。また、家だけでなく、家具や食器を作るのにも適しています。牛糞を使って家具や食器などの作品を生み出しているイギリス人学生のサネリシウェ・マファなど、新しい世代からも牛糞は注目されています。

cow dung patties

4. 象の糞で作った紙

草食動物である象の糞には消化されていない繊維がたくさん残っており、紙の製造に理想的。紙には臭いもなく、手すき紙のような独特の風合いがあるため、世界中で人気を博しています。日本各地の動物園でも「うんこペーパー」や「象さんペーパー」などの名称で販売されています。

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5. お庭に馬糞

馬糞は肥料としても土壌改良剤としても優秀なので、園芸家や農家に人気があります。馬の飼い主も、排泄物を購入してもらえることはありがたいことなので、真のwin-win関係が成立しています。

Pferdemist als Dünger

6. 糞から抽出した香水

動物の糞から香水も作られています。アフリカ南部に生息するハイラックスというネズミの糞は、粉末にして純粋なアルコールに溶かすと、香水の原料になります。香りはムスクに似た官能的な香りだそうです。

hyrax

7. 牛糞製ナプキン

牛糞は家や家具を作るのに使われるだけでなく、アフリカの女性が生理中に使うこともあります。女性たちは牛糞を細長く成形し、乾燥させます。それを布で包んで月経出血を止めているのです。牛の糞は大量の血液を吸い込むことができるため、女性は生理中でも日常生活を送ることができます。

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8. 海鳥の糞の肥料

馬糞や牛糞だけでなく、ペリカンやカツオドリなどの海鳥の糞も素晴らしい天然肥料になります。雨がほとんど降らず、限られた空間に膨大な数の海鳥が生息し、その排泄物が珊瑚礁に何世代にもわたって堆積し、化石化したものを「グアノ」と呼びます。このグアノが肥料の原料になるのです。しかし、グアノの採掘によって海鳥の巣穴が破壊される可能性があり、またグアノ自体もすでに枯渇寸前であるため、これ以上の採掘はすべきではないと考えられています。

Gave up counting

9. 燃料源としての牛糞ケーキ

インドの農村部では、牛糞に干し草を混ぜ、平らなケーキにして乾燥させた「牛糞ケーキ」が伝統的に燃料として利用されています。牛糞ケーキは安価で火持ちの良いバイオ燃料であるため、ネット通販大手Amazonもこれに注目し、農村部だけでなく、都市部の人々が安い牛糞ケーキを手に入れる機会を提供しています。

Cow patty farm

10. 世界一高価な猫の糞のコーヒー

多くのコーヒー専門家が「コピ・ルアク」を世界一のコーヒーと考えています。コピ・ルアクはジャコウネコの糞から採られる未消化のコーヒー豆のみから作られるコーヒー。この希少な猫の糞のコーヒーは世界で最高のコーヒーであるだけでなく、世界一高価なコーヒーでもあります。そのため、東南アジアにはコピ・ルアク生産に特化したコーヒー農園が作られ、ジャコウネコたちをケージに入れ、コーヒーの果実のみを餌として与えていることが、動物愛護や倫理の観点から問題視されています。

Cluster of coffee beans as excreted by the animal, prior to clearing and roasting

11. 化粧品や食品に含まれるカイガラムシの分泌物

シェラックをご存知ですか?カイガラムシは木に寄生する虫ですが、このカイガラムシが体外に分泌する樹脂のような物質がシェラック。1 kgのシェラックを生産するには約30万匹のカイガラムシが必要です。

シェラックは、ヘアスプレーやマニキュアの原料に使われるだけでなく、お菓子やナッツ、コーヒー豆のコーティング剤など身近な食品にもたくさん使われています。

Schellack

他にも、ドイツのケルン動物園は象の排泄物を燃料にすることで年間約10万ユーロ(約1200万円)の暖房コストを節約しています。

持続可能性の実現が必要とされる現代、動物の糞はまさに金にも匹敵するものとして、ますますその価値を高めていくと考えられています。

プレビュー画像: ©flickr/waldopepper ©wikimedia/Geof Sheppard