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栄養ドリンクに疲労回復の効果はない

テスト勉強やレポートをもうひと頑張りしたい学生や、重要なプレゼンや商談が控えた会社員…そんな人たちにとって心強い味方となるのが、栄養ドリンクではないでしょうか。

飲むとシャキッと目覚め、疲れも吹っ飛びます。体中にエネルギーが満ち溢れ、あともう少しだけ、頑張れるようになる…そんな栄養ドリンクは、忙しい日本人にとってはもはや欠かせない、国民的なドリンクと言えるかもしれません。

栄養ドリンクの謳い文句は、何と言っても「疲労回復」ではないでしょうか。疲れた体に染み込むように、有効成分が体に行き渡り、疲労回復を助けてくれる…何となくそんなイメージを持っている人は多いでしょう。

しかし最近になって、ある衝撃的な事実が浮き彫りになってきました。

何と栄養ドリンクには、疲労回復効果はさしてないというものです。

どういうこと!?今まで信じてきたことは全部嘘だったの!?と思った人も多いでしょう。順を追って説明させてください。

近年になって、「疲労研究」は劇的な進歩を遂げ、疲労の原因物質が発見されました。それにより疲労のメカニズムが以前よりも明確に解明され、疲労を客観的に測る技術が発明されたのです。その大発見をしたのは、東京慈恵会医科大学ウイルス学講座の研究チーム。チームは近藤一博教授によって率いられています。

近藤教授は、疲労に強く反応するヘルペスウイルスに着目し、唾液中のそれらのウイルスの量を調べることで、疲労を客観的に測る技術を世界で初めて確立しました。

それにより判明したのは、従来、「疲労回復に効果がある」とされていた物質のほとんどは、「疲労感を軽減させる物質」であり、「疲労回復」自体の効果はないということ。

栄養ドリンクももちろん、その例外ではありません。

小難しい話のようですが、まとめるとこうです。

栄養ドリンクを飲むと、疲労感が和らぐように感じるだけで、疲労そのものは全く取れていないのです。そんな状態にもかかわらず、疲労に対して無自覚なまま、徹夜したり、頑張り続けたりするとどうなるか…みなさん想像がつくのではないでしょうか。

過労で急にバタンと倒れてしまったり、最悪の場合、命を奪いかねない重大事故につながる恐れもあるのです。

そんな…じゃあ、今まで栄養ドリンクを飲んでいたことは、まったくの無駄だったの…?そんな風に、悲しい気持ちになった人もいるかもしれません。

いいえ、必ずしもそんなことはありません。

疲労自体は消えずとも、「疲労感を取る」こと自体にも一定の効果はあり、リラックスしていると感じることで脳に行く炎症性サイトカインを減らすことができます。これはうつ病を引き起こすトリガーの物質として知られているもの。つまり、栄養ドリンクを飲んで、しっかりと休むと、うつ病の予防効果などが期待できるのです。

危険なのはあくまでも、疲労感が軽減したからと言って無理をしてしまうことで、栄養ドリンク自体は私たちの生活の中で大いに役に立てられると言えるでしょう。

近藤教授は、疲労感に無自覚なまま頑張りすぎるのは危険だとし、栄養ドリンクを飲んでも、ちゃんと寝て、休む日を作ることがとても重要であると強調しています。

近年、栄養ドリンクのテレビCMから「疲労回復」の文字が消え、「疲労感の軽減」という言葉に置き換わったのは、このような背景によるものだったのです。

いくら栄養ドリンクを飲むと元気になった気分になるからと言って、頼りすぎるのは禁物です。あくまでも疲労感を少し軽減させてくれるものであり、疲労自体は消えていないのだという正しい認識を持って、うまく付き合っていきましょう。

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プレビュー画像:  / © Twitter/ mm_seiran

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