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イメージと違いすぎ?!原作と違いすぎて観衆を騒然とさせた映画8本

ネタバレ注意:この記事は映画のあらすじの一部を扱っているので、ネタバレになるかもしれません。ご注意ください。

本好きな人にとって、本は新しい世界への扉。読書は日常生活の心配事や不安を忘れ、現実を離れることができる大切な時間です。お気に入りの本が映画化されるとなれば、頭の中で思い描いた登場人物と映画館で出会えることに否が応でも期待は高まるもの。

ピーター・ジャクソン監督の『ロード・オブ・ザ・リング』、フランシス・フォード・コッポラ監督の『ゴッドファーザー』など、原作ファンも含めて世界中の観客に認められた映画もあるにはありますが、人気のある原作の映画化には辛口の批判や失望の声がつきもの。読者のイメージにぴったり合う作品にすることは至難の技なのです。

そうした原作もののなかでも、特に、読者が頭の中で作り上げた美しい世界を無慈悲に破壊し、ファンをがっかりさせた作品8本をご紹介します。

schlechte Buchverfilmungen

1. ホビット

『ホビット』の映画化が2012年に決まるとファンは歓喜しました。監督は、同じ作者の『ロード・オブ・ザ・リング』の撮影で高い評価を得ていたピーター・ジャクソンです。

しかし、300ページほどの原作を3部に分けることが発表されると、冗長になるのでは?原作にないシーンを入れるのでは?と不安の声もあがりました。その予感は正しかったようです。原作に思い入れのあるファンにとって、あらすじが作者トールキンが描いたファンタジー叙事詩とかなり違うものになっていたことは想定外でした。

たとえば、物語の主人公は、原作には存在すらしない女性エルフに出会います。二人のエルフとドワーフの間の三角関係のロマンスは、多くの中つ国ファンを失望させました。

また、原作ホビットの物語は児童文学であったため、戦闘シーンはほとんど描かれていません。しかし、劇場版では詳細な戦闘シーンが描かれており、原作のイメージとはかなり違っていました。

結論:技術的にも映画的にも悪い出来ではありません。ただ、原作ファンにとっては満足できないシーンも多かったようです。アメリカの映画レビューサイトIMDbの評価で、この作品が10点中7.4点と辛口評価になったのもそのせいだと考えられます。(IMDbの評価は8.5点以上が高評価とされています)

Fair use, DatBot @Wikipedia

2. フランケンシュタイン (1931)

原作は英国の作家メアリー・シェリーが19世紀初頭に書いた小説『フランケンシュタイン』。実はフランケンシュタインというのは盗んだ死体から怪物を作りだした博士の名前。しかし、この怪物は原作から一人歩きし、多くの映画や本に登場し、いまでは怪物が「フランケンシュタイン」と呼ばれているのはご存知の通り。生命の消えた体をつぎはぎして、よみがえらせるという狂気に満ちた考えがそれだけ魅力的でもあったということでしょう。

メアリー・シェリーは、フランケンシュタイン博士が作り上げた怪物を絶望的で孤独な、つまり人間そのものとして描きましたが、ジェームズ・ホエール監督が1931年に生み出したこの映画は、残忍でショッキングな怪物のイメージを作り出しました。映画では博士の助手フリッツという原作には登場しないキャラクターが物語に深く関わります。このフリッツが手違いで手に入れた犯罪者の脳が死体に埋め込まれ、それが残忍な怪物に変わるのです。

原作の大幅な改編にもかかわらず、この映画は多くの人々の記憶に残り、その後のさまざまな作品で「典型的なフランケンシュタイン」の原型となっています。

結論:このフランケンシュタインの映画は原作とはかなり違うものの、IMDb評価平均が7.9であることからも分かるように評価は悪くありません

Public Domain, We hope @Wikipedia

3. IT(イット) (1990)

アメリカの作家スティーブン・キングは50冊以上の小説を出版し、世界中で約4億冊が売れているベテラン作家。数ある彼の作品のなかで最も有名な作品のひとつはホラー小説『IT』。この作品は1990年に撮影され、テレビ映画シリーズとして2回に分けて放送されましたが、昨年(2019年)劇場版としてリメイクされ、日本でもヒットを記録したのは記憶に新しいところ。

90年版では、英国人俳優のティム・カリーが『IT』の象徴とも言える邪悪なピエロ「ペニーワイズ」を演じ、話題となりました。ただ、90年版の映画には不気味な雰囲気こそありますが、特殊効果は現代の視点から見ると安っぽく、怖いと感じるかどうかは見る人次第。さらに、スティーブンキングが描く奥行きのある長編小説の再構築には失敗している印象が否めず、原作を読んだことのない視聴者にとっては、会話が不自然だったり、人々の行動を理解しにくい展開になっていました。

結論:カリー演じるペニーワイズというキャラクターにはマニアックなファンが多くいますが、脚本の構成や映画としての出来は新しいバージョンに軍配が上がるようです。こちらはIMDbでは6.9点しか獲得できませんでした。

Fair use, Film Fan @Wikipedia

4. スカーレットレター(1995)

アメリカの作家ナサニエル・ホーソーンの代表作『緋文字』は、アメリカ文学で最も重要な古典のひとつとも言われ、アメリカの学校では必読書とされています。17世紀末のニューイングランド、厳格なキリスト教(ピューリタン)社会を舞台に、夫以外の男性と姦通の罪を犯した女性ヘスター・プリンの物語を描いています。タイトルの『緋文字』は、姦通罪の印として姦婦(adulteress)を示す赤いAの字がプリンの服につけられたことに由来します。

1995年の映画『スカーレットレター』は、原作の内容を表面的には反映しているものの、ストーリーや結末が大幅に書き換えられているうえに、細部では官能的な部分が強調され、メロドラマを見ているような印象。女性やマイノリティーが排除されていた歴史への批判として作られたとはいえ、原作とは逆のハッピーエンドで幕を閉じたことには原作ファンはあきれたようです。

結論:原作の重要なストーリーを軽視した結果、この古典の5回目となる映画化は視聴者の大きな批判にさらされました。IMDbでは、この映画の評価はわずか5.2点となりました。

Fair use, DatBot @Wikipedia

5. エラゴン 遺志を継ぐ者

2006年に製作された『エラゴン』 第1作のIMDbスコアは、前述の『スカーレットレター』よりも悪く、わずか5.1点。ベストセラーになったファンタジーアドベンチャー小説の読者を満足させることはできなかったようです。なによりも、544ページの物語を105分の映画にするために多くの登場人物やストーリーが割愛され、薄っぺらい内容になっていたことが、原作ファンをおおいに失望させました。

また、俳優たち(ジョン・マルコヴィッチとジェレミー・アイアンズなど)の演技にも不満の声が多かったようですが、興行的には悪くない成績だったようです。

結論:原作シリーズのファンは、第2作の映画化に『次こそは』と期待を寄せているようですが、次作はどうなるのでしょうか?

Fair use, Theo’s Little Bot @Wikipedia

6. 不思議の国のアリス (1951年)

『不思議の国のアリス』は1865年に出版された英国の作家ルイス・キャロルの小説。アリスという女の子がクレイジーなパラレルワールドに入り込み、そこでチェシャ猫やハートの女王など不思議で奇妙なキャラクターに出会う話です。この本の出版から約100年経った1951年にウォルト・ディズニーはこの物語のアニメーション映画化を発表しました。

この作品は、世界中で大成功を収め、熱狂的なファンを生みました。でも、原作ファンにとっては微妙な点もあったようです。ディズニー映画の脚本はルイス・キャロル作の『不思議な国のアリス』と続編『鏡の国のアリス』をミックスさせていました。ですから、映画には、両方の小説のキャラクターやストーリーが混在しており、原作に対する忠実性は感じられません。そのためIMDbのスコアは7.4となっています。

結論:ディズニー映画はもちろん芸術的なすばらしい映画ですが、オリジナルの物語のファンには納得できない部分もあったようです。

Fair use, Theo’s Little Bot @Wikipedia

7. フロム・ヘル

19世紀末にロンドンで5人の売春婦が殺害された「切り裂きジャック」事件を題材にした物語。2001年に製作された長編映画ではジョニー・デップとイアン・ホルムが主演を務めました。映画の原作は、アラン・ムーア作、エディ・キャンドル作画の大ヒット グラフィックノベル(コミック)です。

原作コミックも映画も王室スキャンダルの隠蔽に絡んだ事件というストーリーですが、原作ではビクトリア朝末期の人々の生活状況や社会構造までも綿密に描いているのに対し、映画はジョニーデップ演じるアバーライン警部の捜査をめぐるミステリーだけに焦点が当てられています。

結論:映画では、ミステリアスな犯罪ストーリーが刺激的に描かれていますが、幅広い観客のために原作を矮小化した感は否めません。IMDb評価は6.8という芳しくない点数。

Fair use, Theo’s Little Bot @Wikipedia

8. ダ・ヴィンチ・コード

アメリカの作家ダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード』は、世界中で空前のヒットとなった大ベストセラー小説です。この原作の映画化はトム・ハンクス、オドレイ・トトゥ 、イアン・マッケラン、ジャン・レノという名だたる米仏の名優を集め、世界中で大ヒットを記録。しかし、一方で、脚本や監督への評判は最悪という両極端な映画でした。

特にロン・ハワード監督は、マスコミ、視聴者、さらにはカトリック教会からの逆風に直面するとは予想していなかったでしょう。映画評論家からは原作とはほど遠い退屈で薄っぺらい脚本だと酷評され、ローマカトリック教会は、キリスト教への誤ったイメージを伝えているとして、この映画のボイコットを呼び掛けました。

この映画のIMDbスコアは6.6点。多くの人々を映画館に惹きつけ、商業的には成功しましたが、映画評論家や原作ファンの評価は辛口でした。

結論:刺激的な小説は、退屈な会話と誇張された表現で台無しに。

Fair use, Melesse @Wikipedia

有名な原作の映画化はリスクがつきもの。映画の出来不出来よりも、『原作と違う!』『イメージと違いすぎ!』『なぜこのストーリーを改変した?』などの不満が噴出するからです。

登場人物やセリフひとつひとつに思い入れのある原作ファンを満足させるのは高いハードルですが、それでも好きな本が映画化されると期待し、つい映画館に足を運んでしまうのも原作ファンなのですよね。

みなさんにも好きな原作の映画化でがっかりした経験、満足した経験がありますか?ぜひコメントで教えてください。

プレビュー画像: ©Wikipedia