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ヘルスケア

カンピロバクター菌の食中毒で発症する難病ギラン・バレー症候群

食中毒」といえばO-157サルモネラ黄色ブドウ球菌などによって腹痛、下痢、嘔吐、発熱といった症状を発症するイメージですが、東京都に住む坂柚子華(ゆずか)さんは、夏に食べたタマゴサンドが原因で恐ろしい難病に罹ってしまいました。

ある夏の日のこと、近所のパン屋さんへ立ち寄った柚子華さんは、あとで食べようと思い、美味しそうなタマゴサンドを購入。その日は暑く、最高気温は32.7度もありましたが、彼女はタマゴサンドをカバンに入れたまま、その存在を忘れてしまいます。

翌日、柚子華さんはカバンに入っていたタマゴサンドに気づき、消費期限を見ると前日までと表示されていたため、「1日くらいなら大丈夫だろう」と思い、そのタマゴサンドを食べてしまったのです。

それから1週間後、普段通りに大好きなコーヒー牛乳を口にした柚子華さんは、ある異変に気がつきます。なぜか…口の中がピリピリするのです。それはまるで炭酸飲料を飲んでいるかのような感覚だったそうで、それからというもの彼女は何もないところでつまずいたり、手足が痺れるような感覚を覚えるようになります。

それから数日が経ったころ、母と買い物に出かけていた柚子華さんは突然手足の感覚を失って歩けなくなってしまい、その場に倒れてしまったのです!すぐ病院へと運ばれた柚子華さんに医師が告げた病名は、信じがたいものでした。

医師が疑った病名は、ギラン・バレー症候群。外敵から身体を守ってくれるはずの免疫の働きが、末梢神経を攻撃してしまう自己免疫疾患で、人口10万人当たり1〜2人が発症するといわれる難病です。

この病気はウィルスや細菌による感染が引き金となり、柚子華さんの場合、あの暑かった日にカバンに入れたままにしていたタマゴサンドを食べたことでカンピロバクター菌に感染したことがそのキッカケとなったのです。

なぜ末梢神経が攻撃されてしまうかというと、ウィルスや細菌が体内に侵入し感染すると、異物排除を目的として体の中に作られる抗体が、末梢神経の表面にある成分を、ウィルスや細菌の成分と勘違いしてしまい、攻撃の対象としてしまうためです。

これによって手足の痺れや筋力の低下が発生。病気が進行すると、呼吸困難などで死に至るケースもあります。2019年には南米のペルーでギラン・バレー症候群が大流行し死者も出ました。

柚子華さんは検査の結果、ギラン・バレー症候群を発症していることが判明。免疫グロブリン治療と呼ばれる人の抗体点滴する治療のおかげで一命をとりとめ、10日後には手足の感覚も戻り、無事退院することができたそうです。

6月から9月頃まで、高温多湿な状態が続く日本では、細菌がもたらす食中毒が多く発生します。食中毒の原因となる細菌が繁殖しても食べ物の見た目や味は変わらず、匂いに変化もないため、すでに菌が発生している食べ物を柚子華さんのように気にせずに食べてしまう人が少なくないのです。気温の高い日には「食べきれなかった料理は持ち帰らない」「室温で2時間以上放置しない」といった食中毒対策を心得ておく必要があるといえるでしょう。

プレビュー画像:©︎Facebook/Noritoshi Hayakawa

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