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トリビア

飛行機の窓の角が”丸い”のには理由がある。その血塗られた歴史を知って 背筋がゾッとした。

飛行機での旅行となると、席を窓側にするか、通路側にするかで迷いますよね。窓側を選ぶという人の中には、窓から見える地上の眺めや紺碧の空が旅の楽しみの1つという人も多いはず。

ところで飛行機の窓って、どれも角が丸くなっていますよね?でもなぜ飛行機の窓は、建物の窓のように四角くなっていないのでしょうか。このことに2つの血塗られた事件が関わっていることは、残念ながらあまり知られていません。

第二次世界大戦後の1952年、記念すべき世界初のジェット旅客機「デ・ハビランド DH.106 コメット」が運航を開始しました。それまではプロペラエンジン搭載のプロペラ機が主流だった中、低騒音かつ低振動なジェットエンジンを搭載したコメットは、その圧倒的な高出力で空気抵抗の少ない高度も飛行可能な、当時としては最先端の技術を搭載した旅客機でした。

しかし、コメットが就航してからわずか1年後の1954年1月10日、英国海外航空シンガポール発ロンドン行き781便が、地中海上空を飛行中、突如空中分解、乗員乗客35人全員が命を落とす悲惨な墜落事故が発生。さらに、この事故からわずか3ヶ月後の1954年4月8日、南アフリカ航空が運航するコメット機もイタリアの西側に当たるティレニア海上空で爆破、乗員乗客合計21人が犠牲となりました。

イギリスの航空機専門研究機関ロイヤル・エアクラフト・エスタブリッシュメントは、時の英国首相ウィンストン・チャーチルの命令を受け、この連続墜落事故の原因究明に当たりました。その結果、コメットの「窓の形」こそが、墜落の原因だったことを突き止めたのです。

ジェットエンジンのもたらす強力なパワーのお陰で、コメットは空気抵抗が少ない(= 燃費が良い)うえ、高い高度を飛行することができました。しかし、人間の体ではこの高度の低気圧に耐えられないという問題が浮上。その解決策として導入されたのが「与圧」です。機内を与圧すれば、圧力を地上と同じレベルに保つことができ、人間が通常に呼吸できる環境を作ることができます。

しかし、機内を与圧すると飛行機の機体に圧力がかかります。この時、窓の角が直角だったため、応力集中と呼ばれる現象が生じ、窓の角の部分に他の部品の2〜3倍ともいわれる負担がかかってしまっていたのです。しかし、誰もこの事実に気付くことなくコメットは飛行を継続。その結果、金属疲労によりもろくなってしまったコメットの窓は、ついに圧力に耐えきれず大破。ここから生じた急激な減圧によって機体は、空中分解してしまったのです。

これらの痛ましい事故を受け、飛行機の窓は現在のように角が丸く設計されるようになったのです。さらに客室の窓はガラスよりも軽いアクリル製で、3層構造になっています。1枚でも十分与圧に耐えられる設計にはなっていますが、万が一の事態に備えて3層構造が採用されているとのことです。

いかがでしたか?「窓の形」がこのような大惨事を生んでしまうことになるなんて、きっと誰も予想していなかったことでしょう。安全とされる現代の技術は多くの人の犠牲の上に成り立っているということを改めて強く感じます。

プレビュー画像:  ©Pinterest/iphoneswallpapers.com

飛行機の窓の角が\