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Lifehacks

【酸性雨、オゾンホール、狂牛病 …】かつて誰もが恐れた5つの脅威、今は一体どうなった?

環境問題という言葉が叫ばれるようになって、およそ半世紀。1960年代頃から、酸性雨砂漠化光化学スモッグなど地球規模の問題が次々に浮上してきました。当時、破滅的シナリオで人々を恐怖に陥れた諸問題は今どうなっているのでしょうか。

そこで、過去50年の間に人類の脅威と叫ばれた様々な環境問題が、その後実際にどうなったのかを検証してみました。実はデマだったものもあれば、多くの人々の努力と正しい決断で消滅した危機もありました。また、人々の目につかないように巧妙に隠されているものもあるのかもしれません。

Lycéens contre la loi Fillon, 2005

1. 酸性雨

1970年代にメディアで大きく取り上げられた酸性雨。pHの低い雨は、動植物に悪影響を及ぼすだけでなく、建築物や遺跡などの文化財も分解すると言われ、酸性雨は当時、世界でもっとも懸念される環境問題となりました。それに伴い、酸性雨の原因とされた工場や車からの排気ガスによる大気汚染に抗議する声が世界中で高まりました。

酸性雨の最大の懸念は森林に関するものでした。世界中の森林が枯れ、最終的にはすべての生命が酸性雨によって破壊されるのではないかとまことしやかに噂されていました。当時は「雨が目にしみる」という被害を訴える人もいました。

酸性雨の現状は?

森林への被害を懸念する声を受けて、国内外で排気ガスなど大気汚染に関する環境規制が厳しくなりました。また、フィルターシステムや触媒コンバーターなどの技術が進歩したこともあり、大気汚染は着実な改善を遂げました。しかし皮肉なことに、酸性雨が注目を集めた大きな理由だった森林枯渇は、酸性雨とはほとんど関係なかったことがわかっています。酸性雨自体は今も観測されていますが、森林被害との因果関係が否定されたことから、話題にされなくなっているのが現状です。

Weathered tomb

2. オゾンホール

1980年代に「大気中のオゾン層に巨大な穴が空いており、これが急激に拡大している」という報告がなされ、世界中が衝撃を受けました。このオゾンホールから太陽の有害な紫外線がそのまま地球に降り注ぎ、皮膚がんや白内障などの健康への被害が増大することが懸念されました。

オゾンホール の現状は?

科学者たちはすぐにオゾンホールの主な原因を突き止め、フロンなどオゾン層の破壊物質の削減や廃止を定めたモントリオール議定書が発効されました。モントリオール議定書は世界で最も成功した環境条約と呼ばれ、オゾン層破壊物質であるフロンなどの使用が全世界で禁止されることになりました。こうした措置は着実に効果を発揮し、オゾンホールは2019年に史上最小になったと報告されています。

Avengers go on vacation, too!

3. 光化学スモッグ

1970年の夏に、日本全国の都市で、人々が喉や目の痛みを訴え、グラウンドで運動していた生徒が倒れるなど、怪事件が次々に発生したのです。調査により、これは車や工場等からの排ガスが太陽の紫外線と光化学反応を起こし発生する「光化学オキシダント(Ox)」によるものだということが判明。その後、「光化学スモッグ」警報が頻繁に発令されるようになりました。

光化学スモッグの現状は?

工場や車の排出ガス規制が強化されたことで、光化学スモッグ警報が出される日数は減少しました。しかし、日本でも世界でも近年になり、Ox濃度は増大傾向にあり、健康への影響を懸念する専門家の声がまた高まりつつあります。

Red eye

4. BSE問題と食品スキャンダル

2000年には、英国で発生したBSE (牛海綿状脳症、狂牛病)への恐怖が広い範囲に衝撃を与えました。家畜間の感染だけでなく、BSEに感染した牛を習慣的に食べると人間にも感染する可能性があることがわかり、人々は戦慄したのです。

日本では、BSEそのものに加え、BSE関連対策の補助金制度を悪用した企業による牛肉偽装事件の発生も相次ぎ、食の安全が問われる大きな社会問題になりました。結果的に、BSE問題は、日本での感染者がほとんどいなかったにもかかわらず、事件に巻き込まれた少なくとも5人が自らの命を断つという大きな食品スキャンダルに発展しました。

食品の安全に関する問題の現状は?

BSE問題や食品スキャンダルの発生後、食肉生産を始め、畜産や流通の規制が強化されました。しかし、今も食中毒や異物混入、食品偽装などの問題はなくなっていません。それでも、食の安全に関する問題が明るみに出たことで、多くの消費者が価格だけでなく食品の品質にも注意を払うようになったことは大きな変化だったといえるでしょう。

Crazy Cow!

5. 核の脅威

1980年代に話を戻しましょう。当時、冷戦は軍拡競争に発展し、約8万基の核ミサイルが相互に向けられていました。しかし、米ソの和解によって人類は核戦争の恐怖から解き放たれたとメディアは報じ、世界は核廃絶という理想に向かうだろうという希望が生まれました。

核の脅威の現状は?

核戦争の危険は回避されていません。核兵器の総数こそ減少しているものの、核軍縮は一向に進まず、核兵器を保有する国が増えたことで紛争の火種も増えています。さらに、その破壊力は人類を何度も根絶できるものとなっています。しかし、冷戦後、この問題はあまり話題にされることはなくなっています。

そんななか、広島原爆投下から75年を迎えた2020年8月6日、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相が、Twitterに核兵器根絶を訴えるビデオメッセージを投稿しました。アーダーン首相は、「核兵器ゼロが広島と長崎の犠牲者に報いる唯一のこと」と訴え、核兵器禁止条約への批准を求めました。

fukushima #3 blacksmoke

大きな環境問題や社会問題に対応するには、科学的な裏付けと長期的な展望、そして国際的な協力が不可欠なようです。そして、過去半世紀を振り返ってわかるように、人々の声があがらなければ、政府や企業のアクションは生まれません。一人ひとりの声は小さくとも、社会全体が声を上げれば、大きな力となることがわかります。

しかし、情報が瞬く間に拡散する現代は、不安や恐怖に煽られる危険があふれています。冷静に正しい知識と情報を取捨選択するスキルを身につけたうえで、声を上げていくことが大切なのではないでしょうか。