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Lifehacks

おむつを交換するときに赤ちゃんに同意を求めるべき?!炎上した性教育専門家の発言の意図とは?

世界的に子どもへの性暴力や性的虐待が大きな問題となっています。子どもたちを性被害から守るために、「性的同意」の必要性や、自分の身体は自分のものだということを伝える教育の重要性が指摘されています。

最近、オーストラリアの性教育専門家がテレビインタビューで、「親はおむつを替える前に赤ちゃんに許可を求めるべき」と発言し、ソーシャルメディア上で論争を巻き起こしました。

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この発言をしたのは、「ボディ・セーフティ・オーストラリア」で働いているディーン・カーソン。彼女は性教育の専門家として講演や執筆活動を行なっています。

ディーンはアメリカのテレビABCで、「ボディ・セーフティ・オーストラリア」の子どもへの性的虐待に反対するキャンペーンについてインタビューを受けました。そして、同組織では、同意をめぐる問題については3歳から取り組みを行なっていると語りました。さらに、親は子どもが生まれた時から家族の中に「同意文化」を確立すべきだとも述べて、聞き手を驚かせました。

この点を明確にするために、ディーンが挙げた例がネット上で物議を醸すことになります。ディーンは「赤ちゃんのオムツを替える時は、親は赤ちゃんに『今からオムツを替えるけどいい?』と尋ねるべき」だと話したのです。

ネットではこの発言だけが切り取られ、嘲笑と批判の嵐を呼びました。

  • 「赤ちゃんがおむつをして4日目。私はまだ彼の許可を待っているところ」
  • 「できれば、子どもが私の同意を得て自分でオムツを代えてくれたらいいんだけど!」
  • 「数年後には娘に『学校に行きたいですか?行きたくない?じゃあダメだ』って言わなきゃな」

こうした嘲笑はまだいい方でした。誹謗中傷は暴走し、あからさまにディーンを攻撃するコメントが増え、最後は殺害予告や脅迫さえ受けたと言います。この騒動でディーンのフェイスブックアカウントは閉鎖されることに。

ディーンはもちろん、赤ちゃんが同意を与えられないことなど百も承知しています。彼女は、親であっても子どもの体を他人の体として尊重して扱うべきだという点を強調しただけです。

the scandal of the starving baby

彼女はインタビューで続けてこう言っています。「もちろん赤ちゃんは『うん、いいよ。オムツを交換して』とは答えません。でも、親が問いかけた後に間をおいて、ボディランゲージやアイコンタクトを待っていれば、自分の反応を大切にしていることをその子に伝えていることになります」と。

しかし、多くの親は「自分の」子どもを、「自分の」都合で 「自分」がいいと思う方法で扱うことを当然と考えています。子どもは、大人が自分の身体をコントロールしているという事実に慣れてしまい、性的虐待があってもそれがおかしなことだと認識できません。自分の身体は自分のものだという意識の欠如が、子どもが暴行や虐待を自覚できない原因となっているのです。

子どもの虐待のほとんどは、身近な環境、つまり家族や学校、施設の中で起きています。子どもが早い段階で 「ノー」 と言い、不快な接触から身を守ることを学ぶことで被害を食い止めることができるとディーンは考えています。

赤ちゃんに「おむつがえの許可」を求めるという彼女の提案が現実的かどうかはわかりませんが、背後にあるコンセプトは世界中の保育、教育機関で導入されています。保育士はオムツを交換するときは、赤ちゃんに声をかけながら、時間のプレッシャーなしに、フレンドリーで保護された雰囲気の中で行います。また、幼稚園などでも、子どもたちが自分や他人の身体の境界に注意を払えるようなゲームを取り入れるなどの試みが行われています。

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ディーンの発言は文脈を無視すると、確かにばかげて聞こえるかもしれません。でも、その背景にある問題や思想を考慮すれば、嘲笑や批判の対象となるべきものではなかったのではないでしょうか。

プレビュー画像: ©Pinterest/independent ©Flickr/Djuliet