ヘルスケア
新型コロナ後遺症「ロング・コビット」がもたらす影響
流行から2年半余りが経過し、最近では重症化する人が比較的少なくなった新型コロナウイルス。しかし、軽症であっても感染後に長きに渡り後遺症に悩まされているという人が多くいます。長期間続くことから、英語では、Long COVID(ロング・コビット)と呼ばれるコロナ後遺症は、これまであまり実態が知られてこなかったことや、人により症状が異なるため、医療現場を悩ませるものでもありました。
コロナ後遺症:新型コロナが落とす長い陰
「生きながらに死んでいるようなもの。生きている心地がせず、ただ体がそこにあるだけ」「人生を取り戻したい。どうしたらいいの?」「以前のようには二度と戻れない」「人生に絶望している」
これらは、SNS上にシェアされたコロナ後遺症患者の心の叫です。
後遺症に悩まされている人たちは、長期間続く症状や終わりが見えない状況に対し、大きな不安を抱え、また周囲の理解も少ないことから、孤独に苛まれると言われています。コロナ後遺症は複数の要因が複雑に絡み合っていることもあり、かかりつけ医での対応が難しいそうです。後遺症に悩まされている人たちは、見かけ上は「コロナ回復者」ですが、「健康な状態」ではないのです。
コロナ後遺症について
コロナ後遺症は、患者の体の機能や生活の質を著しく落とすものです。どれだけ多くの人がコロナ後遺症を患っているのか、はっきりとした数字は出ていません。また、コロナ後遺症に関する研究は数多くありますが、後遺症の症状ががさまざまで複雑なことから、原因やメカニズムについても全てが明確になっているわけではありません。
最近の研究では、女性の方が男性よりもコロナ後遺症を患いやすいということや、コロナは軽症であっても、コロナ後遺症を患う可能性があるということが明らかになっています。コロナ後遺症を患う10人に1人は、感染時にはまったく症状がなく、療養後や回復後にコロナ後遺症と思われる症状が現れたそうです。そのため、コロナウイルスは重症化しなくなったとは言え、軽視してしまうのは危険です。
また、コロナ後遺症は患者の社会生活にも大きな影響を及ぼします。後遺症に苦しむ多くの人が、休職や退職などをせざるを得なくなり、経済的にも困窮してしまうと言われています。
コロナ後遺症の症状
コロナによる後遺症は、複雑に絡み合って起こっているため、コロナ後遺症患者の症状は皆同じとは限りません。というのも、コロナウイルスは体内のさまざまな組織に入り込むことができてしまうため、コロナ後遺症の症状の現れ方はそれぞれ違ってきます。
これまでに報告された症状のうち、以下の症状がよく見られる症状と言われています。
- 味覚・嗅覚障害
- 重篤な循環器系疾患
- 長期に渡る倦怠感
- 集中力の低下(ブレイン・フォグ)
- 息切れや回復力の低下
- 筋肉痛や関節痛
- 不眠
- うつや不安障害などの精神疾患
コロナ後遺症患者の多くは、家事などの日常的にこなしていた簡単な作業をしただけで、その後ものすごい倦怠感に襲われたと言います。また、急に動いたりするとめまいがしたり、簡単な計算ができなくなるというような症状も見られるそうです。さらには、人によっては倦怠感で体は疲れているものの、ストレスや不安に襲われ、不眠症状に悩まされる人も。メンタルにまで影響を及ぼすコロナ後遺症は、人々のこれまでの「日常」をガラリと変えてしまうものなのです。
長期化するコロナ後遺症の考えられる原因
コロナ後遺症については、なぜ症状が出てしまうのか、明確なメカニズムがこれまでに明らかになっていないというのが現状です。しかし、考えられるいくつかの原因があるそうです。
・体内に残ったウイルスの炎症
回復後もコロナウイルスは体内に残ると言われています。そのため残ったウイルスやその断片が長期に渡り炎症を起こし、コロナ後遺症の症状を発症させていると言われています。
・体内組織のダメージ
コロナウイルス感染により体内の組織や組織への血液供給は永続的にダメージを受け、これが体のさまざまな機能に支障を及ぼしていると考えられています。
・体の免疫システム
回復後にもかかわらず、体の免疫システムが細胞を攻撃してしまうことで、さまざまな不調を引き起こしてしまうと言われています。
・男性と女性の免疫反応の違い
コロナ後遺症では、男女で症状の回復に差があることがわかっています。これは女性の場合、ウイルスを排除する細胞と免疫を抑える細胞の両方が過剰に作られることで、免疫が暴走し、症状が出るためと考えられています。
コロナ後遺症については、そのメカニズムが未だに明確にされておらず、確立された治療法がなく、一人ひとりの症状に応じた対症療法が基本となっています。
コロナ後遺症になってしまったら?
診断方法や治療法がまだ確率されていないコロナ後遺症では、症状に合わせた対症療法が行われています。そのため、かかりつけ医では診断・治療が難しいことが多く、患者自らが後遺症の症状に対応する医療機関を探さなくてはいけないという場合も。しかし最近では、コロナ後遺症患者のための「後遺症専門外来」や自治体で相談窓口が設置され、後遺症に悩む人々が孤立してしまわないような対策が取られています。
各都道府県のコロナ感染やコロナ後遺症に関する相談窓口については、総務省のこちらのサイトから確認することができます。
コロナ後遺症は、患った人の生活に大きな影響を及ぼすだけでなく、周囲の無理解によってさらに患者を追い詰めてしまうという側面も持っています。周囲に後遺症で悩む人がいたら、その大変さや苦しさにそっと寄り添える心を持っていきたいですね。また、重症化することが少なくなったとは言え、コロナ後遺症のリスクを考慮し、これからも感染対策を取っていくことが大切です。
出典: schnellgesund, deutschlandfunk, netdoktor
プレビュー画像: ©flickr/Andy Bullock ©flickr/Antonio Rubio