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その他の豆知識

夏に美しい花を咲かせる夾竹桃について知っておきたいこと

6月ごろから9月ごろにかけてピンクや白、赤などの鮮やかな花を咲かせる夾竹桃(キョウチクトウ)という花をご存知ですか。

道路脇や公園などによく植えられている夾竹桃

花は桃の花に似て、竹のように細長い葉を持つことから、夾竹桃と名前がついたと言われるこの花は、乾燥や大気汚染といった厳しい環境でも育つことから、交通量の多い道路脇や公園などによく植えられています。

そのため、名前は知らないけど、写真を見て見たことがあると言う人や、家の近くの散歩道に咲いているのを見かけたことがあるという人もいるのではないでしょうか。

夾竹桃の扱いには注意が必要

インドが原産で、日本には江戸時代に伝わったと言われる夾竹桃は、夏の暑い時期に鮮やかな花を咲かせるため、つい手に取ってしまいそうになるかもしれません。

しかし夾竹桃の扱いには注意が必要です。というのも、夾竹桃は花、葉、枝に及ぶ全ての部分に毒性が強い物質を含んでいるのです。

毒性の強さは青酸カリを上回る

夾竹桃が持つ毒の成分は主に「オレアンドリン」」や「ストロファンチン」と言われ、特にオレアンドリンの毒性は青酸カリを上回る強い毒性なのだそうです。致死量は成人の場合、0.30mg/kgで、葉っぱにすると約10枚前後の量と言われています。また、夾竹桃に含まれる毒は夾竹桃の成長と共に量が変化するのが特徴で、美しい花を付ける開花期の夏は特に危険とされています。さらに、夾竹桃を植栽していた土にも毒が含まれてしまうほど、強力な毒性を持っています。

夾竹桃の毒を摂取してしまった時に出る症状

万が一、毒を摂取してしまうと、吐き気や嘔吐、倦怠感、下痢、めまい、腹痛などの症状が起こり、最悪の場合死に至ることもあると言われています。また、この毒は口や粘膜に触れただけでも炎症を起こす危険性があります。

夾竹桃については、1975年にフランスで枝を串代わりにしてバーベキューをしたところ、肉にや野菜に染み込んだ毒によって7名が死亡するなどの事例もあります。また、国内では2017年に小学校の児童が、校庭に植わっている夾竹桃の葉を食べられると勘違いし、数枚食べてしまい、直後に嘔気、頭痛などを訴えた食中毒が報告されています。

このように、夾竹桃は口に含まない、さらには触れないように注意する必要があり、夾竹桃への注意を呼びかけている自治体も数多くあります。

復興の花でもある

花や葉から枝に根まで全てにおいて強い毒性を持つと言われる夾竹桃ですが、一方で厳しい環境に耐え得る強さが人々に希望を与えたとも言われています。

今年、原爆投下から77回目を迎えた広島市ですが、夾竹桃は原爆投下後に焦土となり75年間は草木も生えないと言われていた場所に、いち早く花を咲かせたと言われています。そのことから、当時復興に懸命の努力をしていた市民に希望と力を与えてくれた花として、広島市の「市の花」に制定されています。暑さが厳しくなる8月ごろに鮮やかな色の花を咲かせる夾竹桃は、8月6日の平和記念日への思いをより一層感じさせるものと言われています。

また、広島市の他にも、夾竹桃は千葉市の花木、鹿児島市の花としても指定されています。ちなみに花言葉は「油断大敵」や「用心」「たくましい精神」などで、これらも夾竹桃の毒性や強さから生まれたそうです。

このように、毒性がありながらも、枯れにくく管理もしやすく、また美しい花をつけるという特徴から、夾竹桃は街路樹などにも多く用いられたとのこと。

夏の暑さに負けず色鮮やかな花を咲かせる夾竹桃。花から根まで全てにおいて強い毒性がある花ですが、その力強さゆえに広島の人々の復興への希望となったエピソードはとても興味深いですね。

しかし、花がたくさん咲いているこの季節、散歩やアウトドア時など出先で見かけた際は、気をつけるようにしてください。

プレビュー画像:©︎Pinterest/blog.goo.ne.jp
出典:生活110番, 広島市, Tabetainjy