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ただ見に行ってるわけじゃない|大雨や台風時に田畑の様子を見にいく理由
毎年台風や雨のシーズンを迎えると一度は耳にするのが、雨天時に田畑の様子を見に行った農家の方が戻らないという不幸な事故。
大雨になると老人が、田んぼに出かけたくなる。そして行方不明になる。
その気持ちよくわかる。
用水路は限界 pic.twitter.com/Io892FKW9U— 雷電 (@WSlL80yV71b2YBb) July 8, 2021
そういった事故に遭う多くが高齢の農家さん。しばしば「なぜ危険とわかっていながら近づくのか」、「危険なところに出て救助されることになるなんて、迷惑をかけているのでは」などという厳しい声を耳にすることがあります。
しかし、本当に農家の方々は何も考えなしに田畑へ向かっているのでしょうか。「危険を顧みない行為で迷惑」またはひどい時は「老害」なんて言葉を使ってしまう人もいますが、誰も好きで危険に身を晒しているのではありません。
農家の方々が大雨でも台風でも田畑へ足を運ぶのは、「それが農家の仕事だから」です。
台風時に田んぼを見る行為がネットで過度にバカにされがちなのは、
「田んぼを見る」が
「降雨量に応じて田の取水口と排水口の開口幅を変えて水量を調節する」
の意味なのを知らずに「見に行ってもしょうがないだろう」と思われている節がある
「鍋の様子を見る」が火力調整を含むのと同じ
— グレイ (@Baroque384) August 15, 2019
農家の人々にとって、雨量の多い時に田んぼや畑の様子を見に行くのは、大量に流れ入る水から作物を守るため。私たちはつい「見に行く」と言葉通りに受け取ってしまいがちですが、その言葉には、田んぼを見に行って、必要があれば対応作業をしてくる、と言う意味が含まれています。
大雨の際に「田んぼの様子見てくる」で亡くなるの、前は「なんて残念な理由」と思って聞いてたけど、
田んぼの水路を調整したりして守るための「見てくる」だったんだな。
モノを知らないってのは本当に恥入ることで?— 桜花 (@ohka0327) July 28, 2020
私たちも日常よく、お鍋を見る、子供を見る、などと使いますが、そんな時は、多くが目を離しておけない時です。農家の人たちにとって、田畑も同様に緊急時には目を離しておくことができないという思いがあります。言葉の通り、ただ「見る」ために出かけているのではないのです。
このような行動の背景が知られることなく、田畑の様子を見に行く高齢者たちに対する厳しい声は数多く見られます。そんな世間の風潮に一石を投じたFacebookユーザーの野村慶太郎さんの投稿をご紹介します。
「豪雨の中を川や田んぼの様子を見に行って流されて亡くなるお年寄り。
『なんでわざわざそんな時にそんなことするの?頭おかしくない?』『捜索隊の人達に二次災害が出たら迷惑。まさに頑固な年寄りの老害』と若い人たち。そんな声がネットに多く見られる。そんな口調の若いタレントのコメンテーターまで居たりする。
あのね。おじいちゃんだってね、安全な所でテレビ観ときたかったと思うよ。豪雨の中をずぶ濡れになって川や田んぼ観に行きたい物好きなんかいません。でも、行くお年寄りが後をたたない。
それが農家の仕事だから。
泥水が田んぼに入ると米がダメになるから、それを確認したり修理したりしに行ったんだよ。80歳過ぎた高齢でも、定年退職なんか出来ず、今も現役で働いてるんだよ。
あなたたちが朝のテレビの災害ニュース見て『わー、かわいそうー』とか言いながら食べてる温かくて美味しい食卓のお米や野菜は、そういうおじいちゃんの命がけの仕事の結果なんです。
火災現場に飛び込んでいく消防士を止める人はいない。ナイフを振りかざして暴れる犯罪者に立ち向かう警察官を止める人はいない。そして不幸にも命を落とされた時は『殉職』と言われ、死後二階級特進とかあったりする。
豪雨の中を田んぼや川の様子を見に行って亡くなるおじいちゃんも、殉職です。でも、二階級特進で退職金が増える事もありません。それでも美味しいお米を作るために今日も日本中のお年寄りが命懸けで頑張っています。せめて非難せず、手を合わせてあげて下さい。
『頂きます』の時に、短くても良いからそういう人達に想いを。」
私たちが普段口にしている野菜やお米は、農家の方たちが日々手をかけ、時に命までをも懸けて届けてくれているものです。ニュースなどでは多くが、「田んぼを見に行くと行って出掛け、被災した」とのみ伝えられてしまうため、農家の事情を知らない人は、ただ考えなしに見に行くやじ馬のように受け取ってしまうのかもしれません。一つしかない命を守って欲しい、と言う思いは誰もが同じで、時にその思いから非難してしまうこともあります。
しかし農家の方の行動の背景には、作物を守ると言う農家ならではの切実な理由があることを知ることができれば、迷惑や老害などという非難の言葉は減っていくのではないでしょうか。
昨今は気候が大きく変わり豪雨や台風が頻発し、これまでの水害対策では対応し切れない事態が増えています。そういった背景もあり、不幸な事故が増えているとも考えられます。今後、田畑への水害対策がより積極的に行われ、農家の方がたった一人で対応をしなくてはいけないというケースが減っていきますように。
プレビュー画像:©︎Twitter/WSlL80yV71b2YBb


