ヘルスケア
女性に多い自己免疫疾患「全身性エリテマトーデス」ってどんな病気?
全身性エリテマトーデスという病気をご存知ですか?英語の病名は「Systemic Lupus Erythematosus」で、その頭文字をとってSLEと呼ばれます。病名にある「ループス(Lupus)」はラテン語で「狼」を意味し、SLEの特徴的な症状の一つである発疹が、狼が噛んだあとに似ていることに由来します。
海外では、レディーガガにSLEの家族歴があり、定期的に検査を受けていることがニュースになったり、2017年に歌手のセレーナ・ゴメスがSLEによって腎臓移植を受けたことを自身のインスタグラムに投稿し、話題になっています。
Sieh dir diesen Beitrag auf Instagram an
日本では、SLEは難病に指定されており、患者数は6万人とも10万人とも言われています。しかし、この病気については、一般にはあまり知られていないのが実態です。レディ・ガガやセレーナ・ゴメスのような有名人は、自身の経験について話すことで、多くの人にSLEについて関心を持ってもらいたいと考えています。
全身性エリテマトーデス(SLE)とは?
SLEに罹患するのは主に女性で、特に20~40歳の女性に多いとされています。患者の男女比が1対9であることから、ホルモンバランスとの関連性が疑われています。しかし、はっきりした原因は今のところは不明です。名前の由来となった「狼」の噛み痕は、日本では「蝶形紅斑」と呼ばれており、両頬に蝶が羽を開いたような赤い発疹が出ることが特徴です。

SLEの症状は?
SLEは、免疫系が自分自身の細胞を攻撃してしまう「自己免疫疾患」で、発疹以外にもさまざまな症状を引き起こします。症状は良くなったり、悪くなったりを繰りかえすうえに、関節痛や疲労、浮腫など、さまざまな原因で起こる症状を伴うため、診断が難しいと言われています。SLEは、特定の部位だけでなく全身が影響を受ける全身性自己免疫疾患なので、病気が臓器を攻撃すると、腎不全や脳卒中など深刻な結果を招きます。
SLEでよくみられる症状には以下のものがあります。
- 関節痛(85%)
- 倦怠感や疲労感などの全身症状(84%)
- 皮膚症状 (81 %)
- レイノー現象 (手足の皮膚の色が蒼白または紫色になる現象)(58 %)
- 中枢神経系症状(54 %)
- 消化器症状(47 %)
SLEは、風邪や感染症、天候の変化、ストレスなどが引き金となって起こります。SLEは再燃(いったん治まった症状がぶり返してしまうこと)することが多く、再燃前よりも再燃後の方が状態が悪くなり慢性化します。ですから、再燃の危険性をできる限り避けることが重要です。
体内では何が起きているのか?
これまでのところSLEの明確な原因はまだ解明されていません。唯一確実なことは、患者の免疫系が過剰に活性化され、そのために自分自身の体と戦ってしまうということです。抗体が自分の組織を標的として、炎症を起こし、健康な細胞を殺してしまうのです。
ほとんどの女性が15〜45歳の間にSLEを発症します。つまり、思春期以降のエストロゲン分泌量が最も多い時期から閉経までの間です。そのため、血液中のエストロゲン濃度の上昇がこの疾患の発症を引き起こすのではないかと考える研究者もいます。
治療法と予防法
SLEは原因不明であり、現在のところ治癒することはできません。ですが、自己免疫疾患の症状を抗マラリア薬などで治療し、再発を防ぎ、病気の進行を遅らせることはできます。また、自己抗体を調べる血液検査を行うことで、病気を早期に発見したり、除外したりできます。
家族にSLE患者がいる人には、まずこの検査が勧められます。この疾患は5〜13%の割合で遺伝します。SLEが早期に発見され、薬物治療が可能であれば、疾患の進行を抑えることは可能です。逆に、セレーナ・ゴメスの腎不全の例から分かるように、診断が遅れると深刻な結果を招くことがあります。
Sieh dir diesen Beitrag auf Instagram an
早期発見のためにも、自分の身体の症状や徴候を観察し、SLEの疑いがある場合には診察を受け、医師にそのことをきちんと伝えることが重要です。
プレビュー画像:©︎flicker/Jan, ©Facebook/The Legends of Mbbs.

