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Lifehacks

猫の命を守る|耳のマークが目印のさくらねこ

近年、動物の殺処分ゼロを目指し自治体や多くの動物愛護団体やボランティアが協力し、野良犬や野良猫の保護活動が積極的に行われています。しかし、残念ながら動物を無責任に遺棄する人は後を絶たず、人間の身勝手で辛い思いをする動物たちの数はなかなか減っていないのが現状です。

みなさん、街中で見かけた猫で耳がこんなふうになっている猫を見かけたことがありますか?

Twitter@yasunofu3

ケンカによる怪我や病気で耳が破れているのかな…なんて思った方もいるかもしれません。でも実はこれはあるマークを意味しており、意図的にカットされたものなのです。

カットされた耳は不妊手術済みのしるし

耳がV字型にカットされた猫達は、捕獲されたあとに不妊手術を受けて地域に戻された猫のことを意味しています。カットした部分がさくらの花びらのように見えることから、「さくらねこ」と呼ばれています。

 
 
 
 
 
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耳をカットするのは、一度手術を受けた猫を再度捕獲してしまうのを防ぐため。手術の麻酔は少なからず猫の体に負担をかけるので、しるしをつけて見分けることで、猫への負担を減らすことができます。不妊手術の対象となる猫は、外で暮らす野良猫たち。

 
 
 
 
 
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でも、どうしてこのさくらねこが生まれたのでしょう。

さくらねこの悲しい背景

さくらねこの背景には、猫の殺処分という悲しい現実があります。環境省の発表によると、2019年4月1日から2020年3月31日までの1年間で、27,108匹の猫が殺処分されています。そしてそのうちの半数以上が生後間もない子猫です。

猫は繁殖力が高く、1匹のメスは年に3回出産し、1回に平均約5匹の子猫を産むと言われています。メスの野良猫が1年で3回出産をしたとすると、1匹につき増えるのは15匹。生まれた子猫もまた、1年と経たずして出産をするようになります。そのサイクルを考えると1匹から1年で最大で50匹以上増えることになってしまうのだそう。

猫の繁殖力の高さを物語るのが、ニュースでよく耳にする多頭飼育崩壊。不妊手術をしないままでは、猫は増える一方です。たとえ飼い猫だったとしても、増え過ぎて飼えなくなったなどという理由から遺棄され、結果として野良猫がどんどん増えてしまうことになります。こうして増えすぎた猫たちが、今までも現在も残酷な殺処分の対象となってきたのです。

このような悲惨な殺処分を根本からなくすため、保護団体が捕獲して不妊手術を行い、目印をつけさくらねことする活動が行われるようになりました。

猫の命を守るためTNR活動と地域猫活動

この野良猫に不妊手術を施す活動は、「Trap(捕獲)」「Neuter(不妊手術)」「Return(元に戻す)」の頭文字を取って「TNR活動」と呼ばれています。(さくらねことなったのち、譲渡されていく猫もいます)このTNR活動は、地域住民と野良猫の共存を目指す「地域猫活動」として行政が補助を行っていたり、動物愛護団体やボランティアの方々などが携わり行われています。

みなさんも最近、野良猫ではなく地域猫という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。地域猫活動とは、地域にいる「飼い主のいない猫(野良猫)」を排除するのではなく、大切な命として扱い、地域の中で猫を適切に管理し住民と共生を目指す活動のことです。

飼い主がおらず外で暮らす猫がいる地域では、フンなど被害がトラブルとなっていることもあります。そのため、地域猫活動では繁殖を防止し、猫を「地域猫」「さくらねこ」として餌やりやフンの処理などのお世話をし、一代限りの命を全うさせて飼い主のいない猫による苦情や殺処分の減少、及び命を守る活動につなげています。

地域猫活動では動物病院の協力のもと、不妊手術のほか、必要に応じて寄生虫の駆除といった処置を行っているそうです。また、自治体によってもガイドラインを設け地域猫活動を推奨・支援しているところもあります。

猫にはもともと野良猫はいない

ここまで、さくらねこについてご紹介しましたが、活動の元となったは野良猫。野良猫は、元々どこから来たのでしょうか。

 
 
 
 
 
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答えは、人に飼われていた猫が捨てられたり逃げ出した猫たちです。飼われていた猫の脱走もありますが、ほとんどが人の都合でペットとして飼われて、人の都合で捨てられてしまったというケースです。

野良猫が減らないのは猫の繁殖力が高いから、と考えがちですが、元々は人が起こした問題であり、猫は本能のまま生きているだけに過ぎません。猫達は人間の身勝手で外に放り出され、過酷な世界で生きるしかないのです。猫による住民とのトラブルも、野良になってしまった猫たちも、元々は無責任な飼い主が原因です。

保護猫活動や今回紹介したTNR活動が、こうした猫達の命を守っています。過去10年の統計を見れば、猫の殺処分数は大幅に減少していますが、まだまだゼロには程遠い数です。今後、何よりも無責任な飼育放棄が減っていくことで、1匹でも多くの猫の命が大切に扱われていくことを願います。

公益財団法人どうぶつ基金では、2005年から動物愛護事業の基軸として、野良猫の無料不妊手術を行なっています。活動の支援についてはこちらをご覧ください。

プレビュー画像:©︎Twitter/yasunofu3