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“ガスライティング”って?身近な人を心理的に操作する典型的な7つのフレーズ
相手に悪意をもって心理的に操作しようとするのは詐欺師や犯罪者だけではありません。心理的な操作は、親子間やパートナー間など、親しい人間関係の中でも行われています。
「ガスライティング」という言葉を聞いたことがありますか?
言葉巧みに相手の心を操って、相手の自己肯定感を下げ、心理的不安や葛藤を抱えさせ、加害者への依存を生み出す精神的虐待が「ガスライティング」と呼ばれます。
ガスライティングの由来
この言葉は、映画にもなったアメリカの戯曲『ガス燈』に由来します。この作品では、ある男性が妻の遺産を手に入れるために、トリックと不安を煽る戦略で妻を狂わせようとします。
「ガスライティング」という言葉は家庭内暴力(DV)の一種として取り上げられ、2018年に英国で流行語となり、日本でも認知が広がっています。
ガスライティングの加害者がよく使う典型的な7つのフレーズ
1.「大袈裟だよ」
「大したことじゃないだろ?」「君はいつも大袈裟だ」などは、一見、何の害もなさそうな言葉です。時には慰めの言葉として出てくることさえあります。でも、実際にはこのフレーズを繰り返すことで、あなたの意見や感情を軽く扱って、あなたの価値を低めようとしているのです。
2.「そんなに感情的になるなよ」
このフレーズは、いろいろな意味で問題があります。まず、誰もが自分の感情を持つ権利があることを否定しています。ふたつめに、このフレーズは、あなたが感情的すぎると非難しているだけでなく、加害者があなたと違って状況を客観的に評価できるという上から目線の傲慢な発言なのです。
3. 「誤解したなら謝るよ」
「そんな意味で言ったんじゃなかった」や「誤解したなら謝るよ」といった言い方は、うわべでは謝罪しているようにみせかけながら、自分のミスから目をそらさせる言葉。相手が言葉の意図を取り間違えたことに責任転嫁することで、議論の立場を逆転させる巧妙な戦略です。これに惑わされることなく、自分の意見を主張しましょう。
4. 「いちいち細かすぎるんだよ」
別の表現として「頭がおかしいよ」「馬鹿げているよ」「君がおかしいから、こうなったんだ」などもあります。加害者はこういった言葉を相手に浴びせ続け、相手が自分の精神や感覚を疑うように仕向けます。
5.「それは君の想像だ」
加害者は「すべて想像だ」「思い込みにすぎない」などと言って、あなたが状況を正しく判断できることを否定し、あなたに不安や自責の念を抱かせます。さらに、こう言うことで、相手はあなたの心配や懸念を真剣に受け止めることを避けることができるのです。
6.「私を本当に大切に思っているなら・・・・」
このように言うとき、相手はあなたを感情的に脅迫しています。人間関係にはギブアンドテイクが必要ですが、何かを犠牲にしなければならないという義務はありません。
7. 「全部あなたのせいだ」
このフレーズは、ガスライティングをよく表しています。相手はあなたに「悪いのは自分だった」と思いこませ、自分には一切非がないと主張したいのです。
以上、7つの例を見てきましたが、一見無害で悪意がないようなフレーズが、人を傷つけ、自信を失わせることがあります。このような言葉を浴びせられ続けると、自分の感覚や感情を疑うようになり、不安や自責感情に苛まれ、加害者に精神的に依存したり、精神に異常をきたしてしまうことさえあるのです。
心理的な操作から身を守るための対処法
- 自分の直感を信じる。もしあなたが「私は操られているのではないか」「思考が支配されているのではないか」と自問しているのであれば、おそらくそれ以上のことが起こっています。
- 友人など中立的な立場の人に話を聞いてもらう。
- 日記をつけて、起こったことをすべて記録しておく。
- 必要に応じて、心理療法士やカウンセラーなどの専門的なサポートを受ける。
- 操ろうとしている人とは距離を置く。議論に巻き込まれないようにする。
ガスライティングは非常に悪質な嫌がらせであり、相手を心理的に支配しようとする虐待です。日本でもガスライティングへの認知度は高まってきています。被害に遭っていると感じたら、専門知識のある人に相談してみましょう。
出典: brigitte, bavaria-against-violence
プレビュー画像:©Getty Images