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一見プラじゃない物も|身近に潜むマイクロプラスチック
丈夫で加工しやすいと言う利点から、第二次世界大戦後の1950年以降徐々に私たちの暮らしに浸透したプラスチック。今ではプラスチック製品は暮らしの中で当たり前の存在となっています。安くて使い捨てができるという便利さから急速に拡大したプラスチック製品ですが、利便性ばかりを追い求めた結果、プラスチックが及ぼす影響が世界中で現在深刻な問題となっています。
プラスチックゴミ問題でも、最近よく耳にするのがマイクロプラスチック。ポイ捨てや不法投棄などで海に流出したペットボトルや発泡スチロールなどのプラスチックゴミは、半永久的に海に残ります。そしてそれらが劣化し、5㎜以下の微細なプラスチック粒子となったもののことをマイクロプラスチックと言います。近年の研究でマイクロプラスチックは、海洋生物の生態系ならず私たちを含めた地球上の生態系にも悪影響を及ぼしかねないことがわかってきています。
しかし、マイクロプラスチックはこのような海洋プラスチックゴミから発生するだけではありません。プラスチック製品を製造するために使われるプラスチック粒や、製品の原材料として製造された小さなビーズ状のプラスチック。これもマイクロプラスチックです。私たちが普段から日常的に使っている日用品にも多く含まれています。では、その身近な例をみていきましょう。
1. お茶のティーバッグ
お茶のティーバッグは紙製のものもありますが、合成繊維である不織布やプラスチック製のものが使われていることがあります。
アメリカの環境科学・技術学会誌に掲載された研究では、合成繊維のティーバッグを使った市販のお茶4種類を調査しています。その結果、茶葉の抽出温度を95度に設定しティーバッグ1袋から放出されるプラスチック量を調査したところ、約116億個のマイクロプラスチック、約31億個のナノプラスチックが検出されたのです。このプラスチック粒子の量は、過去の研究で明らかになった、食品に含まれる量よりも「桁違いに多い」そうです。
さらには、ティーバッグから放出されたこの2種類のプラスチックをミジンコに投与したところ、身体構造や行動に異常が確認されたことも報告されています。個包装され、すぐにお茶を作ることができる便利なティーバッグ。しかし素材に注意をしないと、お茶に溶け出したプラスチックを知らず知らずのうちに飲み込んでいることになるのです。
プラスチックが溶け出す恐れのある合成繊維(化学繊維)は、不織布、ポリプロピレン、ナイロン。これらで出来たティーバッグは使用をやめるか、使用する際は中身の茶葉を取り出し、コットン製かステンレス製フィルターを利用することをお勧めします。不織布で包まれた出汁パックにも注意が必要です。また、ティーバッグ入りのお茶を使う場合は、生分解性のあるバイオマスプラスチック、または天然素材からできものを選ぶようにすれば安心です。
合成繊維のティーバッグやお茶パックは、煮出すとマイクロプラスチックが発生😣
— プラなし生活 (@lessplastiic) February 12, 2020
レーベンスバウムの紅茶は麻のティーバッグ✨
普段のお茶は、茶葉と茶こしで。たくさん作るときはストレイナー付きのヤカンも便利!
だしパックは中身だけ鍋で煮出し、茶こしで漉す!#プラなし生活 #プラスチックフリー pic.twitter.com/h6Zoa7gdMw
知らないうちに体内に取り込まれるマイクロプラスチックは、ティーバッグだけではありません。
2. 紙コップ
昨年末、インドのカラグプル大学の研究によって、コンビニやコーヒーショップなどでテイクアウトする際の紙コップから大量のマイクロプラスチックが飲料に溶け出していることが判明しています。
市販されている紙コップは水分や熱に耐えられるよう中にツルツルのコーティングがされています。あのコーティングは熱に強い高密度ポリエチレンと呼ばれるプラスチックです。
オイラ紙コップ!
— 琉球大学エコキャン(東京ビッグサイト12/8-10 エコプロ 第3ホール E-04) (@ecocanryukyu) March 10, 2021
紙コップって名前だからって、100%紙でできていると思ったら大間違いだ!!
ほとんどは、薄いプラスチックのコーティングがされているんだ!だから道にポイ捨てしないでくれよな!!
次回は冷蔵庫先輩だ!
楽しみにしてくれよ!! #モノがたる pic.twitter.com/mpE2WrvDvD
先述の研究によると、高密度ポリエチレンでコーテイングされた紙コップに85~90度の熱湯を100ミリリットル注ぎ、15分間放置して観察したところ、ミクロンサイズのマイクロプラスチックが100ミリリットル中に約2万5000個含まれていることが分かったのです。紙コップ入りの温かい飲み物を毎日3杯飲んだ場合、体内に肉眼では見えないマイクロプラスチックの粒子を1日に7万5000個摂取する計算になります。
一見紙製ということで自然にも優しいのではと思える紙コップですが、再利用できず1回使いきりなこと、そしてこのようにプラスチックを含んでいるため土中でも完全には分解できないゴミとなってしまいます。
2019年に世界で生産された紙コップの数は約2640億個。リサイクルもできないため、森林伐採の原因にもなっています。こうした背景を考えれば、できるだけステンレス製のマイボトルを持ち歩くようにしたいもの。コーヒーショップなどでは、マイボトルを使えば、お得に購入できるサービスも導入されています。また、最近では紙コップの内側を生分解性のある生物由来の原料PLA(とうもろこしを原料としたポリ乳酸)コーティングにする動きも出てきています。
初めてマイボトルでカフェ☕️
— KEIGO (@k5myk0802) November 1, 2020
プラゴミもでないし、スタバだと-20円にもなるしお得です。今月からマイボトル持ち歩こ。 pic.twitter.com/Gc0nhCBOcJ
この他にも身近な日用品にはマイクロプラスチックが潜んでいる恐れがあると言われています。
3. パーソナルケア製品
マイクロビーズは多くの日用品に使用されています。歯磨き粉、洗顔料、シャワージェル、化粧品などのパーソナルケア製品のスクラブ材として使われ、100g前後の1本の化粧品チューブに十万個から十百万個のマイクロビーズが含有されていると言われています。
口に含まずとも、毎日使うこれらから出るマイクロビーズは下水処理ですり抜け海に流れ込んでしまいます。先進工業国の下水処理システムではほぼ除去されるとの報告もありますが、それは世界でほんの一握りです。マイクロビーズに至っては、すでにアメリカ、韓国、台湾、オランダ、フランス、カナダ、アルゼンチンなどの国々が製造を禁止しています。EU全体としては2030年までにマイクロビーズを含んだ使い捨てプラスチックの廃止を掲げています。
また、大手企業では積極的にマイクロビーズの使用を取りやめる動きも出ています。国内ではほとんどの主要メーカーがマイクロビーズを代替品に切り替えています。マイクロビーズを成分表示で見分ける際は、 商品の成分表に、ポリエチレン末、ポリエチレン、コポリマーなどの表記がある場合に気をつけるようにしてください。
マイクロプラスチックが直接人体に及ぼす影響や毒性は明らかになっていませんが、長期間にわたり定期的に摂取すると、健康に深刻な影響を及ぼす可能性があることは確かです。地球環境のみならず、全ての生態系を脅かしつつあるプラスチック。日本でも脱プラスチックへの動きが年々大きくなりつつあります。しかし、完全に使い捨てプラスチックがなくなるまではとてつもない長い道のりです。私たち個人にできるのは、日用品一つをとっても、地球環境を考えた選択をしていくことではないでしょうか。
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