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トリビア

読めそうで読めない珍しい名字10選

日本は世界で最も名字の種類が多い国の一つと言われています。私たちが当たり前のように使っている名字ですが、日本人が「名字」と「名前」を持つようになったのは、明治政府が1875年に公布した「平民苗字必称義務令」以降。これにより全ての国民について名字の公称が義務づけられました。

しかし、これまでの封建時代、貴族や武士、商人だけが「姓」を名乗っていたことから、名字が義務付けれた当時、多くの人々がどんな姓を名乗ればよいのか戸惑ったそうです。そのため、とっさに思いついたものを名字にしたという経緯もあり、現在のように種類も多く、そして珍しい名字が存在するようになったのだとか。

そんな経緯を経て現在、実在すると言われる名字は15万、同じ漢字で読み方の違いを合わせると29万通り(!)にもなると言われています。

そこで今回は、数ある名字の中から、読み方が珍しいもの10選をご紹介します。漢字はどれも珍しくないのに、一筋縄ではいかない読み方を持つ名字たち。中には、なるほど!と頷いてしまうものもありますよ。

読めそうで読めない、読み方が珍しい名字10選

1.月見里さん

読み方:「やまなし」

「つきみさと」さんとも読めるこちらの名字ですが、月見里と書いて「やまなし」と読むことができます。まだ高層ビルなどないはるか昔、月が見える場所といえば周囲に高い山や丘がない場所でした。そのため、月が見える場所(里)=山がない、と言うことから「月見里=やまなし」となったそうです。


さらに「やまなし」とは、月が綺麗に見える場所につけられた地名でもあり、現在の山梨県の古名とも言われているとか。こちらの名字を持つ方は、静岡県清水区や千葉県を中心におよそ270人いらっしゃるそうです。

2. 春夏冬さん

読み方:「あきなし・あきない」

季節を表す3文字のこちらの名字、読み方を聞いてピンと来たという方もいらっしゃるのではないでしょうか。四季のなかで「秋」が抜けています。そのため、「あきなし・あきない」さんと読むようになったと言われています。現在では、東京都や愛知県を中心におよそ20人いらっしゃるそうです。

ちなみに、飲食店などの看板に「春夏冬中」と書いてあれば「あきないちゅう(商い中)」ということだそうです。

3. 小鳥遊さん

読み方:「たかなし」

元々は平安時代の清和天皇子孫で源姓を賜った氏族で高梨だったそうです。しかし、「このままでは面白くない」と考え、天敵の鷹(タカ)がいなければ、小鳥が遊ぶという様子から、「小鳥遊=たかなし」としたそうです。現在では、和歌山県を中心におよそ30人いらっしゃるそうです。

さてみなさん、ここで1〜3までの名字の共通点に気がついたでしょうか。すべて「〜なし」さんと読む事ができ、どれも自然の風景からもじった粋な読み方になっています。

では、つぎは数字が並んだものや、普段使っている言葉が用いられた珍しい名字をご紹介します。

4. 四月一日さん

読み方:「わたぬき」

実在する名字としては2つしかないと言われる日付が名字になったもののうちの1つである四月一日さん。この名字は、もともと「綿貫」を語源としますが、旧暦の4月1日(今でいう5月上旬)ごろに、春を迎えた北陸地方で冬用の着物から暖かい綿を抜いて衣替えをしていたことから、「四月一日=わたぬき」と読むようになったと言われています。

宮崎県を中心におよそ10人いらっしゃるそうですが、同じように四月朔日と書いてわたぬきさんと言う名字もあるそうです。

5. 八月一日さん

読み方:「ほずみ」

2つしかない日付の名字の2つ目は、八月一日。旧暦の8月1日は今でいう9月初旬。この頃は、お米の収穫時期であり、旧暦の8月1日には、台風などの悪天候による作物被害が出ないよう、神様に米の豊作祈願をしていたそうです。

お米を収穫する様子である「穂をつむ」ということから、「八月一日=ほずみ」と読むようになったそうです。ちなみに穂積さんがいるように、八月一日という名字は穂積から異形したとも言われています。また、ほずみのほかにも「はっさく・やぶみ」と読むパターンもあります。八月一日さんは全国で80人ほどいらっしゃるそうです。

また、四月一日とおなじように、一日を朔日といったことから「八月朔日」の名字もあります。

6. 一さん

読み方:「にのまえ」

この読み方の由来は、「一」が「二」の前であることから「一=にのまえ」さんと呼ばれるようになったそうです。こちらも、一休さんが出してきそうな頓智の利いた名字で、全国に380人ほどいらっしゃるそうです。なかでも熊本県が多いそうですよ。

7. 九さん

読み方:「いちじく」

九と書いて「いちじく」と読むこちらの名字ですが、由来は九の字が数字で9と書き、9(く)が一筆書きで書けることから「一筆書き(いち)で書ける9=いちじく」となったそうです。

こちらも言葉遊びのようですが、ほかにも九と書いて「いちのく」「く」「くちのく」「まる」さんと読むパターンもあるそうです。

九さんという名字は新潟県や長野県を中心におよそ30〜40人ほどいらっしゃるとのこと。また、数字を使った名字は数多くあり、一文字数字では1〜10まで名字があるそうです。

そしてここからは、読み方が珍しいレア名字をご紹介。

8. 努力さん

読み方:「ぬりき」

どりょくさん?と読めそうな名字ですが、読み方はぬりき。大阪府に見られる名字とのことで、全国でも10人ほどしかいらっしゃらない激レア名字だそうです。

9. 小浮気さん

読み方:「おぶき」

字面からして、ちょっとドキっとするこちらの名字ですが、おぶきと読み、江戸時代からあった小浮気村という地名から由来するそうです。現在の茨城県南部の取手市にあったそうです。おぶきのほかにも「こぶけ・こぶき」と読むパターンもあるとのこと。小さな湿地という語源をもつこの名字は現在では京都府、滋賀県にみられ10人ほどいらっしゃるそうです。

ちなみに、小浮気ならぬ「浮気」さんも実在。「ふけ」さんという読み方があるそうですが、病院の待合室などで「うわきさーん!」と呼ばれることは多々あるそうです。

10. 毛穴さん

読み方:「けな」

けあな!?と読みそうになりますが、大阪府堺市中区毛穴町発祥の名字。鎌倉時代に「毛穴」の表記で記録があり「けな」と読みます。こちらは130人ほどいらっしゃるとのこと。

ちなみに、毛穴さんもさることながら、鼻毛さんという名字もあるそうです。読み方は「はなげ」とシンプルで、30人ほどの鼻毛さんがほぼ全員大阪府泉大津市にいらっしゃるそうです。

おまけ:左衛門三郎さん

読み方:さえもんさぶろう

漢字5文字で日本最長名字の一つ。読み方はそのままですが、最後の三郎を名前と間違われることがありそうです。

今回紹介した名字はほんのごく一部で、珍しい名字は実に1万通りほどあるのだそうです。難解な珍しい漢字だけでなく、月見里さんや小鳥遊さんのように、漢字使いにはどこか日本人の情緒のようなものを感じ、知れば知るほど興味が湧きそうですね。珍しい名字、他にはどんなものをご存じですか?

プレビュー画像:©Media Partisans
出典:名字由来net, hugkum, latte