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ヘルスケア

新型コロナ感染症はなぜ肥満の人で重症化しやすいのか?

肥満が新型コロナ感染症の重症化リスクを大幅に高めることは早くから知られていました。しかし、なぜ肥満が重症化を促すのか、そのメカニズムはわかっていませんでした。

最新の研究で、コロナ感染した患者の脂肪細胞で何が起きているのかが報告されました。この知見は、この病気を理解するための重要な鍵となるかもしれません。

コロナ感染症の重症化の危険因子としての肥満

新型コロナウイルスとして知られるSars-CoV-2の感染症は、人によってかかり方が違います。コロナウイルスに感染しても無症状、あるいは軽い風邪の症状しか現れない人がいる一方で、死に瀕するような重篤な状態になる人もいるのです。

Atenció casos de coronavirus SARS-CoV-2_26

パンデミック当初から、コロナ重症化の危険因子があることは医師たちの間でも明らかでした。ウイルス量、高齢であること、既往症、免疫力低下などは比較的分かりやすいリスク要因です。たくさんのウイルスに感染したり、免疫力が低いと、誰でも重症化しやすくなります。

しかし、もう一つの危険因子として肥満があります。太っている人は、痩せている人よりもずっと頻繁にコロナ感染症の重症化コースに入ってしまうのです。米スタンフォード大学の免疫学者キャサリン・ブリッシュ博士は「病気の重症度と肥満度の間にはほとんど線形な強い相関関係がある」と指摘しています。

しかし、なぜ?

コロナに感染して重症化した肥満の人の多くは、それまではまったく健康な人たちでした。既往症もなく、肥満というだけで問題なく過ごしていたのです。

脂肪細胞にコロナウイルスを発見

この疑問に答えるために、ブリッシュ博士と彼女のチームは死亡したコロナ患者の脂肪組織を調査しました。結果は驚くべきものでした。

©Pexels

研究者たちは脂肪組織から極めて高いウイルス量を検出したのです。コロナウイルスの受容体が脂肪組織に高頻度に発現するため、気づかないうちにそこにウイルスが巣くってしまうのです。

裏をかかれた免疫システム

脂肪組織には脂肪細胞だけでなく、免疫細胞も含まれます。免疫細胞は組織を守る役割を担っています。しかし、脂肪細胞に潜んだコロナウイルスが免疫細胞の炎症反応を誘発しながら、拡散を続けるとどうなるでしょう。

ウイルスが拡がると炎症も拡がります。脂肪組織は全身の臓器にもつながっているため、炎症反応は全身の臓器に広がる可能性があります。

つまりコロナウイルスが脂肪細胞を通して身体中に広がっている間に、コロナ患者の免疫システムは狂ってしまうのです。その結果、重症化の道をたどってしまうのです。

©Image by rawpixel.com

脂肪細胞がトンネルのような役割を果たす

脂肪細胞研究者のフィリップ・シェラー博士は、ニューヨークタイムズ紙で、「脂肪で起こったことは、脂肪に留まらない」と指摘しています。脂肪組織は一種のトンネルシステムのような役割を果たしており、コロナウイルスはこのトンネルを通って気づかないうちに体中に広がり、免疫システムを崩壊させます。そして、脂肪が多ければ多いほど影響は深刻で、重症化する危険性は高くなるのです。

ブリッシュ博士は「この研究データから、脂肪組織の感染とそれに伴う炎症反応が、肥満の人がSars-CoV-2に感染すると重症化しやすい理由の1つである可能性が示唆される」と結論づけています。

長期的な影響も

この発見は、ロングコビッドと呼ばれるコロナ感染後遺症にも大いに関連するものです。なぜなら、コロナウイルスが脂肪細胞に潜伏したままであれば、患者に長期にわたる影響を及ぼす可能性は否定できないからです。たとえ感染症自体が軽い症状だったとしても。

この研究結果は、肥満の人がコロナに感染したら必ず重症化することを意味するわけではありません。むしろ、コロナは様々な要因が相互作用する複雑な病気だということがわかってきています。しかし、肥満が重要な危険因子であることは間違いないようです。

出典:n-tv , utopia , together
プレビュー画像:©flickr/ Hospital CLINIC