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ヘルスケア

イヤホンの間違った使い方がもたらす健康へのリスク

通勤や通学時間を利用して、音楽やニュースを聞いたり、語学勉強をするのに便利なイヤホンやヘッドホン。最近はBluetoothを利用したワイヤレスタイプが主流となり、ますます便利に。

そのため、自宅で掃除中やエクササイズ中、また在宅勤務時などに利用しているという方も多いのではないでしょうか。以前よりも装着時間が長くなったと言えるイヤホンですが、その汚れっぷりはトイレの便座の細菌数の約20倍と言う結果が出るほど。今イヤホンをしているという方なら、思わず耳から外してしまいたくなる事実ですが、イヤホンは利用の仕方を間違えると、耳にかなり負担をかけてしまうと言われています。

この記事ではイヤホン利用時の注意点や健康へのリスクについてご紹介します。

イヤホン利用時に気をつけたい「汚れ」

・イヤホンは実は汚れがつきやすい

多い人であれば毎日使うイヤホン。それ自体が小さくため、そんなに汚れる印象はありませんが、実は身近なデジタルデバイスの中で最も汚れがついていると言われています。

耳に入れるタイプのイヤホン(カナル型やインナーイヤー型)の場合は、耳垢がついたり、湿気が溜まりやすいだけでなく、形状も影響し細かい部分に耳垢や埃が入り、溜まりやすくなっています。特に、耳垢が湿っているタイプの人は要注意。湿性タイプな耳垢の場合、イヤホンに付着しやすくなります。

さらに、耳に触れる部分だけでなく、手で触れることも多いことから手あかや雑菌がイヤホンに付くことに。

また、ワイヤレス型でない場合、イヤホンを使わないときに、カバンの中につい放り込んで入れてしまいがちです。そうなると、カバンの中の小さなゴミやホコリなどが、イヤホンに付着してしまいます。このように、イヤホンは思っている以上に不衛生になりやすいアイテムなのです。

・イヤホンで耳にカビが生えることも

ワイヤレスイヤホンなどは、特に利便性が高いことから長時間つけてしまいがちですが、これは耳に蓋をしているような状態。そのような状態が頻繁に続くと、耳は湿って温かくなり菌が増殖しやすい状態になってしまいます。

また、湿った状態にイヤホン自体も汚れた状態が続くと、耳にカビ(真菌)が繁殖するという事態に。外耳道真菌症と呼ばれ、耳の痛みやかゆみ、耳だれなどの症状が出てくるそうです。

・汚れはイヤホンの故障につながる

耳垢などの汚れが溜まると不衛生なだけでなく、イヤホンの故障にもつながります。汚れによって接触不良を起こし、音質の悪化やノイズが増えたりという現象が出てしまいます。

・イヤホンの正しい掃除の仕方

汚れが溜まりやすいイヤホンですが、こまめにお手入れをすることで清潔に保つことができます。

<表面汚れはティッシュで拭き取る>
まず乾いたティッシュなどでイヤホンの表面を軽く拭き取りましょう。また、つけた後のイヤホンには、耳の中の湿気などが残っているので、ティッシュなどで湿気をさっと拭き取るのもおすすめです。

<細かい汚れには歯間ブラシが便利>
イヤホンの細かい溝に溜まった汚れには、綿棒や爪楊枝もいいですが、歯間ブラシが特に便利。音が出る部分の細かい網の目の汚れも歯間ブラシでかき出します。また、カナル型イヤホンの場合はとくに汚れが溜まりやすいため、イヤーピースを取り外し、中の細かい汚れも歯間ブラシを使い綺麗に取り除きます。また、イヤーピースの表面は、特に肌に触れる部分なので殺菌作用のあるウェットティッシュでさっと汚れを拭き取るようにしましょう。

ここまで、イヤホンの汚れに関して紹介しましたが、最近ではイヤホン利用である健康リスクがあると言われています。

イヤホンやヘッドホンが原因の難聴とその恐ろしさ

・ヘッドホン難聴

ヘッドホンやイヤホンを使用して大音量で音楽を頻繁に聴いている人は注意が必要です。というのも、耳の奥、内耳の中には蝸牛(かぎゅう)という器官があり、その中に有毛細胞という音を感じ取る細胞があります。蝸牛に伝わってきた音の振動を電子信号へと変換し、聴神経を通じて脳に伝る役割を果たしている有毛細胞ですが、実は大音量の音や騒音によって傷つきやすいと言われています。

片耳に約15,000個並んでいると言われる有毛細胞には、「感覚毛」という細い毛のような束があります。蝸牛に音の振動が伝わると、感覚毛が揺れて興奮し、音を電気信号へと変換します。これが聴神経を経て脳に到達すると、音が聞こえる、という状態になります。

しかし、本来は加齢や騒音などにより傷つき壊れていくと言われる有毛細胞ですが、イヤホンを利用して大音量で音を聞くことで細胞が壊れてしまうのだそう。しかも、この一度壊れた細胞は元には戻らないため、イヤホンなどで大音量の音楽を聴き続けていると次第に耳が聞こえにくくなり、加齢に関係なく難聴となってしまうのです。

このような難聴はヘッドホン難聴と呼ばれ、WHO(世界保健機構)でも、若者のイヤホン利用による難聴リスクに警鐘を鳴らしています。WHOによると、世界の中高所得国に住む12〜35歳の若者の半数近く、11億人が難聴の危険にさらされているとのこと。また、WHOはイヤホン等の安全利用の目安を、大人で音量80デシベル、子供で75デシベルを上限とし、1週間に40時間までとしています。

<音の大きさの参考>
80デシベル:地下鉄の車内、電車の車内、ピアノ(正面 1m)
70デシベル :ステレオ(正面 1m、夜間)、騒々しいオフィス、騒々しい街頭

ヘッドホン難聴の症状は、聴力の低下だけでなく、耳鳴りやめまいなどが現れるといいます。
一時的な難聴の場合は、内服や点滴のステロイド剤による薬物療法や血管拡張薬(プロスタグランジンE1製剤)、ビタミンB12製剤、代謝促進薬(ATP製剤)などが効果的な場合もあります。しかし、有毛細胞が壊れて起こるヘッドホン難聴の治療は難しいのだそうです。

・ヘッドホン難聴が将来認知症の原因になりうる

大音量でのイヤホン利用によるヘッドホン難聴について紹介しましたが、「聞こえ」の機能は認知症にも大きく関わっていると言われています。

昨今、認知症の研究が進み、喫煙、肥満、高血圧などが原因であることがわかってきましたが、最も認知症につながりやすい要因は、実は「耳」なのだそう。私たち人間が持つ五感のうち、視覚と聴覚がもっとも大切と言われ、中でも耳が聞こえにくくなると、社会生活におけるコミュニケーション能力が低下し、感情と知能への刺激が減って脳が衰え、認知機能が急激に失われると言われています。

2017年に発表された、認知症の予防や治療などに関する最新の知見をまとめた論文では、「仮に難聴になる人を完全に無くせたとしたら、認知症を今より9%も減らせる」と指摘がされています。このうようにヘッドホンによる難聴は将来の健康にも大きな影響を及ぼす危険があるのです。

・ヘッドホン難聴予防のために

<適正音量を守り、長時間使用しない>
ヘッドホン難聴を防ぐには、音量を下げることはもちろん、長時間音楽を聞きすぎないようにすることも大切です。若者の難聴が増えているアメリカでは、ヘッドホンなどで60分以上音楽を聞かない、ボリュームを最大音量の60%より大きくしないという「60:60セオリー」という言葉が使われているそうです。

<ノイズキャンセリング機能を活用>
また、ノイズキャンセリング機能は、周囲の雑音をシャットアウトし、大きい音量で聞かなくても済むことから、難聴を防ぐのに効果的な機能といえます。

音楽だけでなく、語学学習やオーディオブック、通話など、日常生活の中で何かと利用することの多いイヤホンやヘッドホン。使い方に気をつけることで、今回紹介した健康への被害を防いでいきたいですね。特に、イヤホン利用が原因の難聴に関しては、年齢に関係なくリスクがあります。そのため、一度失った聴覚は戻らない、ということを念頭に置いて気をつけていきたいですね。

身近なデジタル機器のお掃除についてはこちらでも紹介しています。

・電気製品の適切な掃除方法8選

プレビュー画像:©︎Twitter/ROMA_Eye
出典:prebell, onnela, radius