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【実はこんなに危険!】「ため池で溺れる理由」の知られざる真相…恐ろしすぎて震えた

初夏を迎えどんどん気温が上がるこの時期。爽やかな天候の下、バーベキューやキャンプ、釣りなどのレジャーや行楽で自然に親しむ機会が増える中、水難事故の発生件数も増加します。今年のゴールデンウィーク中にも各地で水難事故が相次ぎました。

5月9日午後、香川県丸亀市のため池に釣りに来ていた小学1年生の男の子と33歳の父親の2人が溺れ亡くなるという痛ましい事故が発生しました。

事故の起きたため池は水深6m。川や湖のように流れも波もなく、一見穏やかに見えるため池ですが…実はため池で発生する水難事故は、決して珍しくはないのです。

農林水産省のデータによると、毎年20人から30人がため池での水難事故により命を落としており、事故の発生件数は春と夏に集中しています。

池の斜面がコンクリートで形作られているため池は、そのなだらかな傾斜から、「落ちてもすぐに岸にあがることができる」と思いがちです。しかし、この斜面も低く見え、一見すると安全そうに見えるため池には恐ろしい危険性が隠れているのです。

2016年7月1日に宮城県大衡村のため池「八志沼」で発生した、つい父子3人が犠牲となった水難事故現場で行われた事故調査の様子をごらんください。

動画1: ため池斜面から水中へ落ちる様子(水難学会提供)
 
事故調査の一環で、水際の緩やかな斜面を歩く水難救助隊員。乾いたコンクリートの上では全く問題はありませんが、少しだけ水に片足を入れただけで、水中のぬかるんだコンクリートに足を取られ、滑り落ちるようにして肩までの深みへと入ってしまいました。
 
動画2: ため池から自力で上がろうとする様子(水難学会提供)
 
続いての動画では、ため池から自力での脱出を試みます。しかし、ある程度まで岸辺に近づいた地点で、コンクリートのぬかるみで足が滑り、それ以上接近することができません。ため池の構造がお椀型ということもあり、斜面とぬかるみ両方に足をもっていかれる状態なのです。
体勢を工夫し、限界まで接近を試みる水難救助隊員。しかし、その度に足が滑り、深みへと戻されてしまう…まるでアリ地獄のような光景です。
 
専門家によると、勢いをつけて這い上がろうとすると、反動でさらなる深みへと押し戻されてしまうそうです。足の届かない水中で呼吸を確保することができなければ、溺死してしまいます。泳げる人でも、水位の深い場所でずっと泳ぎ続けることは困難。体力を消耗して溺れてしまう可能性があります。
 
事故調査が行われた八志沼の水難事故では釣りをしていた父子3人が亡くなったということもあり、小さな子供に見立てたポリタンクを岸にあげることができるか試します。水を入れたポリタンクは18キロ。小さな子供の体重を想定した重さです。
 
動画3: 子供に見立てたポリタンクを岸に上げようとする様子(水難学会提供)
 
子供がため池に落ちると、まず親は助けようとして池に入ります。動画では子供に見立てたポリタンクを抱き抱え、岸に上げて助けようとしますが…ある程度まで岸辺に接近すると足が滑ってしまいます。
息を切らし、なんとか重いポリタンクを上げようとしますが、どうしても足が滑り、深みへと戻されてしまい、徐々に体力を消耗していく様が見てとれます。
実際にこのため池での水難事故で、この動画と同様の状況があったことを想像すると胸が痛む光景です。
 
動画4: ロープを使ってため池から上がる様子(水難学会提供)
 
動画1でため池に入った水難救助隊員が「(何か掴めるような)手がかりがあれば(岸に上がることができる)」と言っていたように、ロープを使うと岸に上がることができます。ただし、救助者が傾斜に立ってロープを持つことは落水の危険もあるので危険です。また、素手で引き上げようとするのは、ため池の中に引きずり込まれてしまうリスクが傾斜によりさらに高まるので大変危険です。ため池の中に落ちて意識がある人を発見したらすぐに119番通報するよう、専門家は呼びかけています。
 
専門家によるとため池は構造上、人が入ることを想定して造られていないため、一度落ちると上がることができない構造となっているそうです。動画からも分かるように、岸辺に捕まることのできる樹木やロープなどがない限り、自力での脱出は極めて困難です。
ライフジャケットを着用していれば足が届かない深さでも呼吸は確保できますが、水温が低い時期であれば低体温症となり発見・救助まで時間がかかる場合、命を落とすリスクが高まります。
 
「ため池に落ちても、生きて戻ることができればいい」という考えから水難学会では樹脂ネットを利用した自己救命策を考案し、宮城県内を中心に普及を始めています。
 
動画5: 自己救命ネットを活用した這い上がり(水難学会提供)
 
動画ではため池に落ちた被験者がコンクリートのぬかるみで足が滑らないよう、背中で浮いたまま岸辺に接近。岸に到達してからひっくり返ってネットを掴み、斜面を上がっていきます。この樹脂ネットは、ため池事故の救命用に適切な素材で作られており、特別な固定方法があるため、詳細は水難学会にお問い合わせください。
 
波も流れもなく、一見穏やかで安全そうに見えるため池は、釣りや水遊びスポットとなりがちですが、一度落ちると上がることができない構造上の危険性はほとんど知られていません。毎年全国で20〜30人がため池での水難事故で命を落としていますが、犠牲者の中にはため池の管理人も含まれています。うかつにため池に近寄ることは危険と隣り合わせなのです。

湖や川、海など、自然の水辺に比べると、水面も穏やかで安全そうと錯覚してしまいがちなため池ですが、思わぬ危険性が潜んでいるのです。「本当は怖いため池」について世間の認知が広がれば、今後ため池での水難事故も防げるかもしれません。

※ ため池の危険性についてより詳しい解説は、一般社団法人水難学会会長であり長岡技術科学大学大学院教授の斎藤秀俊さんの記事「ため池に落ちると、なぜ命を落とすのか」をご覧ください。

 

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