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ヘルスケア

タンポン使用時に起きるトキシック・ショック症候群

女性のみなさんは生理用品、何を使っていますか?

ナプキンよりも長い時間モレにくいという理由で、タンポンを愛用している方もいるでしょう。でも、タンポンは8時間以上続けて装着してはいけないということをご存知ですか?

タンポンのパッケージには、使用上の注意として、装着しつづけると「トキシック・ショック症候群(TSS)」の危険があることが記載されています。トキシックショック症候群とは何でしょうか?そして、どのような場合に起きるのでしょう?

©MediaPartisans

トキシック・ショック症候群(TSS)とは

トキシックショック症候群(TSS)は、死に至ることもある怖い病気ですが、タンポン愛用者でもTSSについてまったく知らない人もいます。

トキシック・ショック症候群は、細菌(黄色ブドウ球菌やレンサ球菌)によって引き起こされる感染症です。これらの細菌が産生した毒素が子宮や開いた傷口から血流に入り込みます。免疫系が抗体を持たない場合や免疫が低下していると、重篤な循環不全や臓器不全を起こすのです。

トキシックショック症候群は、自然界に多く存在する細菌に対する反応であるため、女性特有の病気ではなく、男性や子どもも怪我や手術後などにかかる可能性があります。

トキシックショック症候群の有名な症例に米国のモデル、ローレン・ワッサーのケースがあります。2012年10月、当時24歳の彼女は寝室の床にうつぶせに倒れているところを警官に発見されました。彼女からの連絡がないことに心配した母親が通報したのです。

ローレンは臓器不全に陥り、心臓発作に見舞われており、もう少し発見が遅れていれば命を落としていたでしょう。しかし、彼女に何が起きたのか、担当した医師にはわかりませんでした。

その答えが分かったのは感染症専門医が彼女にこう尋ねた時でした。「タンポンを使用していますか?」答えはYES。

検査の結果、ローレンがトキシックショック症候群であることが判明しました。タンポンを替え忘れたために、細菌が繁殖し、体内に毒素が回ったのです。

その結果、ローレンの両足は壊死し、切断しなければなりませんでした。

2017年にも同様の報道がメディアを駆け巡りました。ベルギーで、17歳のマエルがトキシックショック症候群で死亡したのです。ここでも、原因はタンポンの長すぎる装着でした。

女性にとって、こうしたニュースは恐怖と不安を引き起こすものです。しかし、ドイツの産婦人科感染症センター長のヴェルナー・メンドリング教授は「これらのケースは悲劇的ですが、非常に稀なケースであり、タンポンをつけたからといってTSSになるわけではありません」と強調します。

しかし、タンポンはトキシックショック症候群のリスクを高めることが分かっています。だからこそ、この病気について女性は理解しておく必要があるのです。

©Gettyimages (icon image)

トキシック・ショック症候群の発生頻度は?

幸いなことに、トキシックショック症候群はまれです。発症は20万人に1人程度と言われています。さらに、成人の約90%は、生活の中で病原体に対する抗体を形成しているため、感染しても軽症で済むことがほとんどです。

トキシック・ショック症候群の兆候

前述のローレンやマエルのような重症例はかなり稀です。しかし、以下のようなトキシック・ショック症候群の兆候がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。

トキシック・ショック症候群の兆候

  • 突然の頭痛
  • 高熱
  • めまい、循環器系障害
  • 吐き気、嘔吐、下痢
  • 広範囲の発疹
  • 筋肉の痛み

TSSの特徴は、上記のような症状が起こった後に急激に進行すること。発見が遅れるほど重篤化するので早い処置が必要です。

特に、生理中に上記の症状が現れ、タンポンを長く使用していたことが気になる場合は、できるだけ早く婦人科あるいは救急外来を受診してください(内科では見落とされる可能性があるため)。

なぜタンポン使用時に起きるのか?

トキシックショック症候群の症例は1970年代から急激に増加しました。その理由は、合成繊維で作られた吸収性の高いタンポンの登場。合成繊維タンポンは交換頻度が少なくてすみますが、同時に細菌が繁殖しやすい環境を作り出したのです。

現在、超吸収型タンポンは販売中止になり、TSSの発症は大幅に減っています。それでも、タンポンによるTSSのケースはいまも報告されています。

TSSのリスクを減らすため、タンポンはこまめに交換するようにしましょう。タンポンを膣内に長く放置すればするほど、細菌が毒素を形成する時間が長くなってしまうからです。また、オーガニック素材のタンポンはTSSのリスクを大幅に減らすことが分かっています。そして、タンポンを交換するときは、手を石鹸でよく洗い、清潔な状態を保つようにしましょう。

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タンポンの取り忘れの他の影響

タンポンを長く装着していると、トキシックショック症候群に加えて、以下のような不快な結果をもたらす可能性があります。しかし、これらは通常は危険なものではありません。

  • 不快なにおい:月経血は、タンポンが膣内に長く留まるほど強くにおいます。
  • 腹痛:タンポンに雑菌が繁殖すると、体は雑菌と戦おうとします。その結果、けいれん性の痛みを引き起こすことがあります。
  • 膣の痛み:タンポンを長く装着していると膣粘膜が乾燥します。そのため、膣が炎症を起こし、タンポンを交換するときに痛みを感じることがあります。

タンポンの代替品として月経カップがあります。月経カップは、清潔に洗浄して使用すれば、TSSのリスクはタンポンよりもずっと低くなります。ただし、月経カップも長い時間装着せず、清潔に使うことを心がけましょう。

トキシック・ショック症候群は稀な病気ですが、タンポンや月経カップを使用する時にはこの危険な感染症のリスクがあることを知っておくことが大切です。何か不安な点があれば、婦人科医に問い合わせましょう。

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出典:mylily , morgenpost
プレビュー画像: ©Gettyimages, ©︎Pinterest/google.de